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龍はヒゲを抜かれると、一切の力が使えなくなるらしい。銀おじさんは、抜いたヒゲを「もう大丈夫だと思えたら、返してやればいい」と、双子のお兄さんに渡したそうだ。
それから六年、ずっと家からも出ず穏やかに過ごす弟を見て、双子のお兄さんは「もう大丈夫だろう」と、ヒゲを返して欲しいと頼んできた弟に、返してしまったんだ。
だから、力が戻った龍が、再び凛を連れ去ろうとすぐに凛の匂いを辿って、僕達の前に現れた。
四年前のあの時、凛を連れ去ろうとした龍の邪魔をした僕と天清は、奴の術で作られた水のナイフで刺された。
今でもその時の赤い傷痕が、僕の左肩と天清の右肩に残っている。
全く同じ大きさの傷痕だけど、刺さる深さが違ったのか、僕にだけ後遺症が残ってしまった。
天気の悪い日や強く傷痕を押された時などに、小さく電気が走ったようにピリリと痛む。
それを知った時から天清は、今みたいに泣いて「自分に痛みが来ればいいのに…」と悔やむんだ。
だけど僕は、後遺症が残ったのが僕で良かったと思っている。だって、天清が苦しむ姿は見たくないから。
天清に辛い顔をさせておいて、こんな風に思う僕を許して…と、僕の頬に触れる柔らかい髪の毛をそっと撫でた。
しばらくして天清が、僕の肩から顔を上げる。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を見て、僕は苦笑しながら傍にあったティッシュの箱を渡す。
「ほら、綺麗に拭きなよ。すごい事になってるよ?」
「…ん」
僕が持つティッシュの箱から、天清は、ティッシュを数枚抜き取ると、ゴシゴシと目元を拭って鼻をかみ、丸めたティッシュを器用にゴミ箱に投げ入れた。
天清の赤くなった鼻を見て笑う僕に、天清が真面目な顔をして言う。
「青藍、もう二度と青藍が傷つかないように、守れるように、俺は強くなるから」
「ふふっ、ありがとう。でも、僕だって、大切なものを守れるように強くなりたいんだ。天清と僕、どっちが強くなるか競走だね」
「えっ?せ、青藍の大切なものって…」
「青藍、いるー?」
その時、外からドアを叩きながら僕を呼ぶ声が聞こえた。
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