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バタンとドアを閉めて、僕の腕を掴んだままの腕に触れる。トントンと軽く叩きながら、天清の顔を覗き込んだ。
「ごめんね。宿題の続きしようか?」
天清は、僕と目が合うと、僕の両腕を掴んで正面から見つめてきた。その目が、困惑したように揺れている。
僕は、目をぱちぱちと瞬いて、小さく首を傾げた。
「どうしたの?何か怒ってる?」
「…青藍は、あいつのこと、好きなの?」
「あいつ…?あ、柚葉のこと?好きだよ。話しやすいし」
「おっ、俺より…っ?」
何をそんなに必死に聞いてくるのだろうと不思議に思いながら、僕はクスリと笑う。
「ほんとにどうしたの?柚葉は大切な友達。天清は、大切な家族。違う好きだから、比べられないよ」
「家族……」
ポツリと呟いて僕の腕から手を離し、天清は元いた場所へと戻り力なく座った。
そして、鉛筆を持って宿題の続きをするのかと思ったら、ぼんやりとノートを見つめたまま動かなくなった。
この学校に入って来て、約一年ぶりに会った天清は、相変わらず人懐こくて明るいのだけど、さっきみたいに僕に執着して、今みたいに情緒が不安定になる時がある。
ーー成長過程においてよくあるという、心の病ってやつ?いやいや…、だって天清は、まだ七歳になったばったかだし。まだまだ子供だし。あ、もしかして、親と離れて寂しいのかな…。
そう思うと、急に天清が愛おしくなってきて、僕は天清の後ろに膝立ちすると、背中から優しく抱きしめた。
途端に、天清の身体がビクン!と跳ねる。
僕は、天清の耳に口をつけて、静かに囁く。
「天清、大丈夫だよ。僕がずっと、傍にいるから。僕が守ってあげるからね…」
次第に天清の身体が小刻みに震えてきて、泣いてるんだと思った僕は、更に強く抱きしめた。
「…バカ、人の気も知らないで…。この小悪魔…っ」
「え?」
天清が何か呟いたけど、俯いているからよく聞き取れない。でも、悪魔って聞こえたような…。
「黒い翼は同じだけど、僕は天狗だよ?しかも、いずれは大天狗になるんだから!」
「知ってるよ…」とまた呟いて、天清が大きく肩を落として溜息を吐いた。
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