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顔面に激しい空気抵抗を受けて進み、柚葉が何かを呟いたと同時に柔らかい空気に包まれて無音になる。
それはほんの一瞬のことで、すぐに少し冷たい風が吹き付けてきて、僕は身体をフルリと震わせた。
スピードを緩めた柚葉が、腕を外して嬉しそうに笑う。ゆっくりとした速さで飛びながら、「上手くいったな!」と僕の左肩を叩いた。
「痛っ!力入れ過ぎっ。…今、結界を抜けたの?」
「そうだ。たぶん、先生には全く気づかれてねぇぞ」
「ねぇ柚葉、抜ける時なんて言ってたの?教えてよ」
「えーっとだな…。…………」
柚葉から思ったよりも簡単な呪文を教えてもらい、頭の中て復唱する。これを、先程の印を作って唱えればいいんだな…と、記憶に刻み付ける。
「この辺まで来ると、やっぱり暗くなってきたよな。青藍、早く行こうぜ」
「うん、そうだね。なんだか雨が降ってきそうだしね…」
僕は、ここで一瞬、もう引き返そうかとも思ったのだけど、せっかく結界を抜けたのだからと思い直して、先を促すように僕を見た柚葉に頷き返すと、黒い雲に覆われた山へと近づいて行った。
目的の山に着くと、先程の晴れ渡った空とは打って変わって、今にも降り出しそうに辺り一面が暗い。
しかも気温も下がっているのか、僕も柚葉も寒さでカタカタと震えていた。
高い木々が立ち並ぶ中に、川の側に少し開けた場所を見つけて、二人で舞い降りた。
翼をしまい、両腕で自分を抱きしめるようにして、キョロキョロと辺りを見回す。
天狗の郷の領域内にある山と何ら変わった所はなく、あちこちと見て回っている柚葉に声をかけた。
「柚葉、僕らの郷とあんまり変わらないよ。もういいじゃん。帰ろうよ…」
「う~ん、確かに変わった所はないよな。そうだな…、寒いし帰ろ…う…」
「…騒がしいな…。俺の眠りを妨げるのは、誰だ…」
突如聞こえてきた低い声に、僕と柚葉の身体がビクン!と大きく跳ねた。
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