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バサッと大きな羽音と共に、風が前方から吹きつける。
僕が、固く閉じていた目を開け前を見ると、倒れた男の背中を踏みつけ、変な方向に曲がった男の腕を掴むお父さんの姿が見えた。
「あっ!おじちゃんっ!俺がやっつけようと思ってたのにーっ。手、出しちゃダメじゃん!」
僕の脇に跪いていた天清が、立ち上がりながら抗議する。
「ああ…、ごめんごめん。青藍の姿を見たらついカッとなって踏みつけてしまったよ」
優しく微笑んで天清にそう言いながら、お父さんは足にグリグリと力を込め、既に折れているであろう腕を、更に引っ張っていた。
「ぐあっ!やっ、やめ…っ!」
「おまえ、このまま頭を踏み潰し腕をもぎ取ってやってもいいのだが…。さて、どうしてやろう…」
今までに見たことも無いお父さんの冷たい様子に、僕と天清は、ただ固まってジッと見ていた。
「鉄様」
男の呻き声しか聞こえない静まり返った中に、突然声が聞こえて三人の天狗が空から降りて来た。
その内の一人が、僕を見て慌てて駆け寄って来る。
「青藍様っ。これはひどい…っ」
「浅葱…。僕、ヘマしちゃった…」
「いえ、お友達を逃がして戦っていたのでしょう?ご立派ですよ…」
そう言って、浅葱が僕の額に張りついた髪を撫でる。
「青藍…」
浅葱の後ろから声がしてそちらを向くと、お父さんが僕の傍に来てしゃがみ込み、「少しの間、我慢しろよ」と言って、僕を抱き上げた。
「浅葱、おまえは天清を学校まで送ってやれ。僧正と織部は、その男をここから西へ三十分程行った所にある神社へ連れて行け。そこで銀が、蔵翔(くらと)を呼んで待っている筈だ。そいつの処分を任すと伝えてくれ。俺は、青藍を一族が経営する病院に連れて行く」
「「はい」」
なんでお父さんや天清はここに来たんだろう…と不思議に思いながら、顔を横に向けてぼやける瞳で天清を見た。
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