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乖離(かいり) 1
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騒がしい教室を出て、僕は足早に廊下を進む。三階の教室から一階へと階段を降りて、突き当たりにある部屋に向かう。部屋の前に着いて、保健室と書かれた扉を静かに横へ滑らせた。
「一ノ瀬、どうしたんだ?もしかして、また痛むのか?」
窓際の机で本を読んでいた白衣を着た男が、立ち上がって僕に近寄る。
「うん。今日は体術の授業があったからね。ちょっと、頑張り過ぎた」
「おまえ程の力があれば、手加減して授業を受ければいいものを…」
「そんな訳にはいかない。この学校で一番強かったとしても、世の中には強い妖がたくさんいる。僕は、その全ての妖の中で一番になりたいんだ」
「知ってるよ…。何度も聞いたからな。ほら、ここに座れ。ちょうど昨日、いい貼り薬が入ったんだ」
僕は、この部屋の主、保健医の朝霧先生に示されたベッドの端に腰掛けた。
半袖のシャツを脱いで、Tシャツの袖を捲り上げる。
「それじゃあ貼れないからちゃんと脱げ」
「……」
僕は渋々Tシャツの裾に手をかけると、勢いよく脱いで、Tシャツをシャツの上に置く。
「相変わらず白いな…」
僕の上半身を見つめる先生の視線が嫌で、「早くして」と冷たく言い放つ。
フッと息を吐いた先生が、僕の左肩の赤い痕の上に、貼り薬をペタリと貼った。
「ん…っ」
ヒヤリとした冷たさがとても心地よく、体術の授業の後から続いていたピリピリとした痺れが、スーッと消えて無くなる。
僕は、そっと腕を回して何ともないことを確認すると、先生を見て笑って言った。
「すごいね、これ。もう痛くなくなってきたよ。先生、ありがとう」
「…っ!…ああ、楽になったなら良かった。あ、少し待て。剥がれやすくなってるから、テープで止めておこう」
先生はそう言うと、色んな物が入った箱からテープを取り出して、貼り薬を止めていく。
全ての処置が終わり、貼り薬を上から軽く押さえていた先生の手が、スルリと肌を滑って僕の胸の尖りを掠めた。
その瞬間、思わず小さく震えてしまい、その事が恥ずかしくて急いでTシャツを着る。シャツを掴んで立ち上がった僕の手首を、先生が強く掴んで引き止めた。
「なに…っ」
「おまえが慌てて服を着るから、少し剥がれただろうが。気をつけろ」
「テープで止めたから、そんな簡単には剥がれないでしょ。大丈夫だから離してよ」
僕の手首を握りしめて、先生が見つめてくる。
冷たいくせに粘着質なその目が嫌で、「なに?」と僕は冷たく言い放った。
「…いや、15歳にしては、ずいぶんと華奢だな、と思ってな」
「…まだ僕は成長過程なんだ。今から大きくなる」
「ふ…、そうか」
強く腕を引いて先生の手を振り払う。僕は、シャツを羽織ってボタンを止めると、先生に手を差し出した。
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