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「いたっ!痛い…」
天清が、悲鳴をあげながら僕から身体を離す。身体を前に曲げて、涙目で僕を見上げた。
僕は、熱くなった顔を右腕で隠して、天清を睨みつけた。
「…何しようとしてんの?」
「だって、青藍が可愛い顔をするから…」
「はっ?可愛くないしっ。そーゆうことは、おまえにベタベタとくっ付いてるあの女とすればいいだろっ」
「あの女?誰のこと?」
「前におまえとキ……、何でもないっ。もう行くから」
「あっ!待って…っ」
身体を翻して出口に向かおうとする僕の背中から、天清がふわりと腕を回す。
「今日、学校が終わったら青藍の部屋に行くから」
「…なんで?」
「勉強、見て欲しい所がある」
「おまえ、頭いいじゃん」
「青藍ほど良くない。ダメだって言っても行くから。絶対に部屋にいろよなっ」
耳に響く天清のハスキーな声に、僕の背中がゾクゾクと痺れる。思わず喉の奥から甘い溜息が漏れそうになって、慌てて手で口を押さえてコクコクと頷いた。
「やった!約束だぞ?じゃあな青藍、また後でっ」
「ひぁっ!?」
僕の頬にチュッとキスをして、天清が軽やかな足取りでトイレから出て行った。
僕は天清の唇が触れた頬に手を当てて、その場に立ち尽くす。
朝霧先生にキスをされても、僕は少しもドキドキとしない。手を握るようなものだとしか思っていない。
だけど今、天清に頬にキスをされただけで、僕の体温が一気に上昇し、心臓が早鐘を打ち始め、嬉しくて顔が自然と蕩けてしまう。
なぜこうなるのかを、僕は知っている。はっきりと自覚している。
僕は、天清が好きなんだ。兄弟を思う気持ちではない。恋愛の意味で、好きなんだ。
でも、天清に伝えるつもりはない。
出会った頃から、「青藍好き」と言って、僕に抱きついてきた天清。大きくなった今でも、さっきみたいに僕に触れ、キスをしようとする。
でもそれは、親しみを込めた天清の過剰なスキンシップに過ぎない。僕と同じ気持ちで、僕を好きなわけじゃない。
だって、僕は見たんだ。
あれは、天清が中等部に来てすぐのこと…。
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