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天清の唇が触れた頬に手を当てたまま、トイレから出て教室へと向かう。まだ頬は熱く、僕は俯いて歩きながら階段の手前でチラリと保健室に目をやると、長い溜息を吐いて小さく頭を振った。
結局、最初にキスをされた日から、左肩を痛めて保健室に行く度に先生とキスをするようになった。
先生はいつも、僕が手当のお礼を言おうとすると、頭を引き寄せて口を塞ぐ。
先生の腹をぶん殴ってやろうと拳を固めることもあるのだけど、ふと天清がキスをしていた映像が頭をよぎり、もうどうでもいいや…と投げやりな気持ちになってしまうんだ。
だけど、先生とは唇を触れ合わせる軽いキスだけ。舌を絡め合う恋人同士がするようなキスはしたくない。
だからと言って、天清としようとも思っていない。
教室に戻ると、そろそろ昼休みが終わる頃だというのに、まだあちらこちらで騒がしく話し声が聞こえていた。
僕は、自分の席に戻って腰を下ろし、机に肘を付いて窓の外を眺めた。
「青藍、大丈夫だった?」
話しかけられて前を向く。
光輝が前の席に座って、僕を見ていた。
僕は、小さく溜息を吐いて光輝を睨む。
「光輝…、天清に保健室に行ったって教えただろ」
「うん、ドアの所に立って中をキョロキョロ見てたからさ。それに女子に話しかけられて困ってたから教えてやった」
「…あいつ、目立つからな…」
「そうだな。耳と尻尾をもふもふしたーい!って女子に迫られてたぞ?あははっ、あいつの困った顔が面白かっ…た…」
女子に話しかけられたと聞いて、僕はムカムカとする気持ちを吐き出すように、大きな溜息を吐く。
それを、自分に対して怒ってるのかと勘違いしたらしい光輝が、両手を合わせて謝ってきた。
「ご、ごめんな?俺、余計なことしちゃった?」
眉尻を下げた光輝の顔を見てると、彼は悪くないのに嫌な態度を取ったことが申し訳なくなって、「大丈夫だよ」と、僕は微かに笑って答えた。
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