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「父さんっ!」
天狗の郷の中心にある屋敷の広い庭に降り立つと、僕は玄関の扉を勢いよく開けて飛び込み、ドカドカと足音を鳴らして父さんの部屋へと突き進んだ。
「父さんっ」
「…騒がしい。少しは落ち着いて行動しろ、青藍」
飛び込んだ部屋の中で、父さんが大きな1人がけのソファーに座っていた。
背もたれに身体を預けて、こちらを呆れた顔で見る。
僕は、ソファーの肘置きに飛びついて父さんを見上げた。
「とっ、父さんっ!怪我はっ?起きて大丈夫なのっ?」
矢継ぎ早に尋ねる僕の、肘置きを掴む手の上に手を重ねて、父さんがフッと笑う。
「ああ…、心配させて悪かったな。背中を少し切られたが大丈夫だ。これくらいならすぐに治る」
「よ…かったぁ…。浅葱から聞いた時、心臓が止まりそうになった。怖かった…っ。…ねぇ、相手が妖狐だって…」
「僕はおまえに知らせるつもりはなかったのだが…。浅葱が僕の制止を聞かずに飛び出してしまったのだ」
「だって鉄様っ、俺は切られる所を見てるんですよ?驚いたし、早く青藍様を呼んでこないと!って、必死だったんです!」
父さんの隣に正座して、浅葱が泣きそうな顔をして言う。
父さんは小さく溜息を吐くと、僕の頭をポンポンと撫でた。
「青藍…、天清はどうしてる?彼はこの事を知っているのか?」
「うん、知ってる。浅葱が来た時に一緒にいたから、浅葱の話を聞いてる」
「そうか…。天清が心を痛めてないといいが…」
「天清の父さんに連絡して、この事の原因を聞くと言ってたよ」
「清忠か…。あいつは現場にはいなかったから、悪くないのだが…。青藍、今回のことで怪我をしたのは、僕と、僕を襲った奴の2人だけだ。だから、僕が引けば今回の事は収まる。が、悪いな…青藍。僕は今や天狗一族の当主だ。他の種族の、しかも一般の妖に傷を付けられて黙っている事など出来ない。…おまえと天清が、兄弟のように仲がいいのはよく知っている。だが暫くは、天清と会わないでくれ」
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