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僕は、一度父さんを振り返ってから浅葱を見た。
「それ、本当?」
「本当みたいですね…。現当主の清忠の兄は、昔、凛を殺そうとした事があります。銀様と共に、俺も助けに行きました。その時に銀様に痛い目に合わされてます。妖狐の上層部からも注意を受けた筈です。それから数ヵ月後に凛が会った時に、『人が変わったように丸くなって、謝られた』と言ってました。彼の変化は天狗族の中でも噂になってました。彼の様子を不思議に思った妖狐族の一人が、彼の側近から『どうやら銀色の天狗の花嫁が気になるらしい』と聞き出したそうです。今回、言い返したこちら側の者が、その妖狐族の者と知り合いで、この話を聞いていたそうです」
「ふ~ん。凛って、妖にモテモテだね…」
「ぷっ…!それは…俺も常々思ってました。銀様が怖くて誰も手を出せないですけどねっ」
肩を震わせて笑う浅葱を見て、彼はもしかしてこの状況を面白がってるんじゃないかと、目を細めて睨む。
浅葱は僕の視線に気づくと軽く咳払いをして、足が痺れたのか正座を崩して足をさすった。
「やば…感覚がない…。んっ、コホン。でもですね、その話は、青藍様が生まれる前後の話なんですよ。彼がまだ凛を思い続けているってことはないと思うのです。でも、彼は結婚をしていなくて独り身だ。だから、こちら側の者が、早合点してまだ凛が好きなんだろうと口走ってしまった。そこで、当主を愚弄されたと妖狐側の数人が身構えた。当然、こちら側も臨戦態勢に入る。だけど、お互いの当主が冷静で、やめるようにと止めに入った。一旦はどちらも引いたのですけど、どうにも腹の虫が収まらない妖狐側の一人が、抜刀して言い返してきた奴に斬りかかった。あまりにも素早い動きで、俺や周りの者は見ていることしか出来なかったのですが、咄嗟に鉄様が、身を呈して彼を守ったのです…」
「え…父さん…」
父さんを見ると、肘置きに肘をついて頬杖をつきながら苦笑いをする。
「本当に急過ぎて、術で止めることも思い浮かばずに身体が動いてしまったんだよ。我ながら情けない…」
「ううん…。ちゃんと下の者を守る父さんは、立派でかっこいいと思う」
「そうか…。僕を斬った奴は、怒った天狗数人に斬られてな…。すぐに止めたから何箇所かの切り傷で済んだ筈だ。僕の背中の傷もそんなに深くはなかったから、数日で治る。だが、斬り合いになった後に仲良く出来る筈もなく、お互いを睨みつけて帰って来たのだ。最初に斬りつけてきたのは向こうだ。こちら側から謝るつもりはない。だから、向こうが謝ってくるまでは、妖狐一族とは一切関わりを持たないからな」
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