アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
23
-
僕は、正座した膝の上に置いた手を見つめて、ポツリと言う。
「…でも、僕は妖狐族を嫌いにはならないよ…。これからも天清に会いたいし…、天清が好きだ。一緒に強くなるって誓ったし、離れるのは嫌だ…」
「…青藍様…」
「だけど一族としての立場も分かってる…。だから、父さんの言う通りにする…。学校も辞めて、ここでもっと修行して、来年、人間の高校に入る」
「青藍」
優しさを含んだ父さんの声に、僕は歪めた顔を向ける。
「父さん…」と口を開くと同時に、頬に涙がポロリと伝い落ちた。
「父さん…、父さんの言う通りにするから、お願い…。最後に天清に会いに行かせて。だって…このままで離れてしまうのは嫌だ…」
次から次へと涙が零れ落ちるけど、拭うこともせずに、僕は父さんを見つめた。
父さんは、しばらく僕を見ていたけど、大きな溜息を吐くと、「わかった」と困った顔をして言った。
「どうせ寮にある荷物も取りに行かなければならないしな。浅葱と柚葉に手伝ってもらえ。その時に、天清に会うといい。…青藍、二度と会えなくなる訳では無いが、しっかり気持ちの整理をつけてこい」
そう言って苦笑する父さんに手招きされて、傍に移動してしゃがみ込む。
父さんは、僕の頭にポンと手を乗せると、小さく「すまない…」と呟いた。
父さんの温かい手の感触に、僕はますます胸が詰まってまた涙を零す。
天清は、どうなったのかと心配して僕の帰りを待ってるだろう。
僕が悲しいように、きっと天清も悲しむ。きっと我儘を言って僕を止めようとする。
だけどお互い、いずれは一族の頂点に立つ身なのだから、自分の気持ちだけを優先してはいけない。
僕は、袖で顔を拭うと立ち上がり、「大丈夫だよ」と言って部屋を後にした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
75 / 207