アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
プロローグ
-
言い訳になってしまうが、こんな関係は望んでいなかった。
いや、正確には、『恋人』とこんな関係は望んでいなかった。
多分最初から間違っていた。でもその時はセフレでいいと本気で思っていた。
都合のいい存在。乱暴に抱いても構わない、玩具のような存在。束縛や干渉とは無縁な、身体だけの関係。
それこそが望んでいた関係で間違いなかったのに、いつの間にかそこに情が生まれていた。それからは坂道を転がり落ちるように、猛スピードで相手に落ちた。
何とかしてセフレから脱しようと、恋人という関係になろうと、ヤる訳でもないのに会いに行ったり一緒に出掛けたりした。誕生日にはプレゼントを渡して、仕事がひと段落した時には息抜きに二人で旅行に行った。
ヤってる時には「好きだ」と言って、性急なセックスはやめた。
それが間違いだと気付いたのは、一緒に暮らさないかと声を掛けた時だった。
「……なんで?」
こっちがなんでって聞きたかった。でも続いた言葉に事実を突きつけられた。
「別に恋人でもないのに」
恋人ではない。脳内で反芻されたその言葉は急激に俺から体温を奪った。
確かにそうだった。俺が勝手に執着して、俺が勝手に好きになって、俺が勝手に恋人にするようなことをしていた。でもセフレをやめようとも、恋人になろうとも、明確に口にしたことはなかった。
「じゃあ恋人になろっか」
相手も自分に恋愛的な意味で好意を抱いてくれているのは気付いていた。気付いていたからこそ、勝手に恋人になった気でいた。
相手の気持ちがちゃんと自分に向いている。だから言えた言葉だったのに。
「なんで?」
本当、こっちがなんでって聞きたかった。
「今のままでいいじゃん」
その顔は明らかに絶望していた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 2