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失恋
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僕が恋を自覚したのは中学生の時。
性についての興味が、その人に向いていると気づいた。
でもその人に気持ちを伝える予定は無い。
だって、その人の隣には、もう大切な人がいるから。
僕と似ている癖のある硬い髪。身長だって彼女と僕はそこまで変わらない。彼女の苦手な料理を僕は作ることが出来る。彼女みたいに、あなたの帰りが遅いだけで浮気を疑ったりしない。あなたが疲れている時、彼女より先にあなたの愚痴を聞いてあげることが僕には出来るよ。
僕にすればいいよ。
彼女に飽きたなら僕がいる。
何もそんな面倒臭い人とずっと一緒にいることない。
だってほら、顔だって彼女と僕、なんとなく似ているでしょ?
別れちゃえば?
そう言う度、あなたは「お前はまだまだあいつの良さがわかってねえんだな」って笑うんだ。
分からないよ。
だってきっと僕の方があなたのことを愛してるんだ。
何年も何年も想い続けているうちに、いつの間にかあなたはおじいさんになってしまった。
シワが増えて、髪の毛が少なくなって、背が低くなって。
「早く孫の顔が見てみたいな」なんてジジくさいセリフを呟く。
あなたに孫ができたなら、きっとその子はあなたに似て優しい子なんだろうな。
初めて見た時より何倍も老けた彼女が先に旅立った日、目を覚まさなくなった彼女の手を握り、あなたは静かに涙を流した。
これからも愛している、と彼女に囁いたあなたを見て、僕はまた失恋する。
恋を自覚した日から、僕は毎日失恋している。
ねえ、愛しているよ。今までも、これからも。ずっとあなたのことだけを。
泣いているあなたの背中を撫でて「僕がいるよ」なんて言ってみる。
あなたは笑って「孫の顔見せてから言えよ」って嬉しそうな顔をするんだ。
僕は一生あなたに恋焦がれ続けて、一生失恋し続けるんだろう。
ごめんね、父さん。
愛してるよ。
生まれた時からずっと。
END
【妻を愛した男と父を愛した男の話】
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