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変なやつ 4
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「ソラ、今日ちょっと帰るの遅くなるから先飯食ってて」
「·········今日何の日かわかってる?」
「俺の20歳の誕生日だろ?わかってるよ、ソラじゃないんだから自分の誕生日忘れたりしないよ。できるだけ早く帰ってくるから」
「なんか一言多いんだけど。もうご飯用意してあげない」
「ごめんごめん、いつもありがと。でもあんま無理すんなよ?まだ腰痛いだろ」
「誰かさんが朝から盛るせいで」
「ごめんって。じゃあもう行ってくるな」
「うん」
ベッドに寝ていたソラが上体を起こして、俺からのキスを受け入れる。
最近やっと大人しくキスを受け入れてくれるようになった。
少し前までは、恥ずかしがって絶対不意打ちじゃないとさせてくれなかったことを考えるとかなりの進歩だ。
少し恥ずかしそうにする恋人に見送られ、高校を卒業してすぐ就職した仕事先へと急いだ。
定時であがり、少し寄り道をしてから家に帰る。
鞄に入っているそれを見ながら、あいつはきっと忘れてんだろうな、と驚くソラの顔を想像して扉を開けた。
「ん、おかえり」
「ただいま。遅くなってごめん、もう飯食った?」
「まだだけど」
「じゃあ後で一緒に食べよう」
風呂上がりなのか、肩にタオルをかけてソファでくつろいでいるソラの湿った髪にキスを落とす。
「······?なに」
「ソラ、左手出して」
ソラは怪訝な顔をしながらも左手を差し出す。
その手を握り「俺のこと好き?」とソラに問いかけた。
「なに······今さら。そんなの聞かなくたって······」
「だってソラ、セックスしてる時しか好きって言ってくれないし」
「い······っ言ってないバカ!変なこと言うな!」
「あー!ごめんごめん冗談だから逃げんな!」
真っ赤になって逃げ出そうとするソラを捕まえて、両手で顔を固定する。
「お願い。ちゃんと言ってほしい」
ソラが真っ赤な顔を悔しそうに歪ませる。
前から思ってたけど、こいつほんと俺の顔に弱いよな。
無自覚なんだろうけど。
「っ·············ぃ、いっかいしか······言わないから」
「うん。いいよ」
「········す、······っ、すき!···········これでいいんでしょ!」
真っ赤な顔をさらに赤くして睨んでくるソラに思わず破顔してしまう。
相手の顔に弱いのは俺の方かもしれない。
「俺も好きだよ」
そう言ってソラの左手薬指に銀のリングをはめる。
ああ、よかった。サイズぴったりだ。
「約束、遅くなってごめんな。どうしても今日渡したかったから」
少し泣きそうな顔をしてるソラに、今日役所に取りに行った紙を渡す。
ソラはそれを受け取ると、今度は本当に泣き出してしまった。
「ばか、ばかぁ······こんなの、約束してない·····っ」
「うん。でもずっとこうしようって思ってたから」
ソラはその紙を胸に抱きしめて、嬉しそうに泣く。
小さい時から、嬉しい時も悲しい時も感情が高ぶるとすぐに泣いてしまう癖は変わってないみたいだ。
「ソラ、俺と家族になってくれますか?」
「うんっ······うん·····っ」
何度もうなづくソラの頭を撫でると、ぎゅうっと抱きついてくる。
「本当に俺でいい·····?俺、素直じゃないし、めんどくさいし、男だよ」
「それでも俺はお前がいいよ。そんなお前だから、これからもずっと一緒に生きていきたい」
「意味、わかんない·······っ、変なやつ」
肩口に顔をうずめて泣くソラをあやしながら、俺はこれからの生活を想像して、これ以上ないくらい幸せな気分になるのだった。
END
【素直なやつと素直じゃないやつの話】
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