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その後、授業中も休み時間も兄さんとのことについて考え込んでいた
ご飯を食べていてもどこか違う世界に行ってしまっている侑舞を、和はずっと心配気に見ていた
何度も大丈夫か? と聞く和に、ほぼ反射で「大丈夫」と返し続けた
そんなこんなで、久しぶりの学校は考え事をして終わってしまった
憂鬱な気分を抱えたまま、和と共に家へと帰った
家の前で和と別れ、玄関の扉を開くとそこには兄さんの靴があった
バイトに行く前に帰ってきたのだろう
靴を脱ぎ、リビングに向かおうとしたところで、兄さんが階段を下りて玄関に来た
兄さんはこちらを見ることなく、バイト行ってくるからとだけ告げると、足早に玄関を出て行った
そんな兄に行ってらっしゃいと声をかけ、俺はリビングへと入っていった
もうダメなのかもな……
侑舞はどうしたらいいか分からなくなった
俺だけが何とかしたいと思ったところで何も変わらない
悔しかった
今までどれだけ兄さんに甘えていたのか思い知らされた
話をしたくても、目すら合わせてもらえない状況で、何ができるというのだろう
いや、何もできない
話をしたところで、本当に伝えたいことが伝わってくれないに違いない
家を出ようかな……
この家の権利は兄さんにある
出て行くなら俺だ
でも今の俺には何もない
お金も社会的地位も何も
なんて無様なんだ
結局1人じゃなにもできない子供だ
それに、今家を出ればおそらくもう関係を修復できることは無くなってしまうだろう
しかし現時点で解決策など思いつかない
正に八方塞がりだ
こんなことなら言うんじゃなかった……
そんな思いが侑舞の心の中を占めていた
俺が……俺が兄さんの心を壊してしまった。
また俺は殺しちゃったんだ
一体俺はどれだけの犠牲を出しながら生きていくのだろう
侑舞を襲ったのは、終わりの見えない絶望だった
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