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リモネ
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それから、再び会ったのは、梅雨明けて夏になってきた頃。
「おはようー」
この前の苛立ちはどこへやら。笑いながらに喫茶店に来た彼女を眺めつつ、俺はというと、やっぱり本を読んでいた。
「あぁ。おはようございます……」
ぱらぱらとページをめくりながら、素敵な屋敷の写真をいくらか見つけた。昔の文豪の人がすんでいた場所、貴族の生まれだった人が過ごした場所、昔のお医者さんがすんでいた場所……
広い空間なのに、どこか騒がしく、でも、どこか寂しそうな感情を纏う建物。
このときの最近のお気に入りはレモネード。
マスターは注文のとき「リモネー」と言っている。
「相変わらずそんなの読んでんの」
いつもの席にいる俺に、いつもみたいにスーツを来た彼女が眉を寄せながら近づいてくる。
「はい。面白くて」
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