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好きになりたい
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「バイキンマンさぁ、なんであんぱん嫌いなの?」
公園のベンチに座りながらバイキンマンに話しかける。
さっきまであんぱんを凝視しながら固まっていたバイキンマンが上を向いてはぁーーっと深いため息をついた。
「俺様、あんぱんだけはどうにも好きになれないのだ………食べたことないけど」
「食べたことないの?」
「…だって…の……だから…」
「なに?聞こえないよ」
「だって!アンパンマンの、名前と一緒、だから……」
僕には意味がわからなかった。なんで僕の名前だからって食べないのだろうか。
「……僕のこと嫌いだから?」
「違うのだ!!!」
勢いよく僕の方を向いて言った。その直後、はっとしたように目を逸らして俯いた。正直こんなに否定してくれるとは思わなかった。…いや、むしろ嫌いだから食べないのだと思っていた。
嬉しい
そんな気持ちが込み上げてきた。顔が熱くなるのが分かる。なんと言えば良いのか。
「俺様が…あんぱんを食べないのは、あんぱんを好きになったら……アンパンマンに嫌われると思ったからなのだ」
「え?なんで?」
「お前は人気者で皆のヒーローなのだ。俺様があんぱん…アンパンマンを好きになったら………そう思うとどうしても食べられなかったのだ」
どういうことだろう。あんぱんと僕は別なのに。
「アンパンマンとあんぱんは同じじゃない…それは分かってるのだ。だけど、それでも…」
ちょっとまって、それってもしかして、
「僕のこと、大好きなの?」
「……へ?」
あ、だめだこれ分かってないやつだ。恋なんて夢のまた夢だろうね。
「あははっ、気にしないで笑」
「…お、俺様は別にアンパンマンのことなんか好きじゃないのだ!!!!」
そういっているバイキンマンの顔は真っ赤に染まっていた。気づいてないんだろうなぁ。
「ほら、あんぱん一回でも食べてみたら?僕の前でだけ!」
「や、やだやだやだ!!!」
「食べなかったら、今夜は僕と一緒にお風呂かな」
ぼそっとつぶやく。
「はひっ⁈」
少し悩んだあと、一口食べる。
一口が小さくて可愛いなあ…そう思ってるとバイキンマンが目を輝かせてこっちを見た。
「ふふっ、気に入ってくれた?」
「こんなに美味しいなんて知らなかったのだ!」
はぐはぐと一気に食べてしまった。
幸せそうな顔をしているバイキンマンを見ると胸が高鳴った。
「いいこだね、よく出来ました」
微笑んでバイキンマンの頭を撫でながら立ち上がる。
「帰ろう、バイキンマン」
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