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最後のMessage
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ななもり side
わかんない、わかんないよ……
ねぇさとみくん?なんで俺を置いていっちゃったの……?
さとみくんがいない世界なんていらないんだ。
真っ暗で何も見えなくて、光なんてなくて、どうしていいかわからない。
さとみくんがこの世を去ってからもう1ヶ月が過ぎたね。
持病、あったんだね。
初めて知ったよ。
なんで教えてくれなかったの……?
俺はそんなに頼りなかったかなぁ?
さとみくんがいなくなってからの1ヶ月、俺は生きた心地がしなかったよ。
なにをするにもさとみくんが頭に浮かんで、何を言うにもさとみくんを思い出して、俺の思い出の中にはいつだってさとみくんがいたんだ。
さとみくんを思い浮かべては泣いて、さとみくんを思い出して何度も何度も何度も泣いたよ。
俺はね、何よりもどんなものよりも、さとみくんが大切だったんだ。
さとみくんの声が、さとみくんの笑顔が、さとみくんの優しくて温かい手が大好きだった。
最年長のくせに少し子供っぽくて、イケボのくせに鼻にかけてなくて、すぐ調子のるけど誰よりも周りを見てて、ほんなところが大好きだった。
何もする気が起きなくて、ふとさとみくんが大好きだった海に行ってみようと思った。
そこに行ったら何かが変わる気がして。
着いた頃にはもう空が赤く染まっていて、とても綺麗で儚げな景色だった。
浜辺に着いた時、聴き慣れた、なるはずのない着信音が鳴った。
これはさとみくんからのメールの音。
さとみくんのケータイはもう解約されていてなるはずなんてないんだ。
でもこの音はさとみくんだけの音。
ケータイを開くと、一通のボイスメッセージが届いていた。
不思議と自然にそのボイスメッセージを押していた。
少しだけ音が割れた録音。
さ『ねぇるぅとー?これちゃんと撮れてる?』
る『撮れてますから早くしてくださいよ、……これがさとみくんからなーくんへの最後の言葉になるんですから』
さ『わかってる、よ。』
る『無理しないでください、ね』
さ『スゥーハー、えっと、なーくん?聞こえて、る?なーくんにこのメッセージが届くとききっと俺はこの世にいません。持病のこと、ずっと隠しててごめん。何度も言おうと思った、でも心配かけたくなくて言えなかった。本当は死ぬような病気じゃないんだ。苦笑 でも俺は運が悪くて悪化した。余命宣告された時、なーくんの顔が頭から離れなかった。なーくんをひとりぼっちにしてしまう、そう思ったんだ。でもな、少し考えて、ひとりぼっちになんかならないってわかった。なーくんにはすとぷりがある、メンバーがいる、リスナーがいる。ころんもるぅとも莉犬もジェルもきっとなーくんを支えてくれる。助けてくれる。だからなーくんは大丈夫。なーくん、これは俺からなーくんへの最後のお願い。俺のことは忘れてください。きっとなーくんはずっと俺の事を愛してくれてる。でもそれじゃあなーくんはずっと幸せになれないから。俺はなーくんのそばにいることが出来ないから。だからなーくんのそばにいてくれる人と幸せになってください。なーくん、大好き。いつかきっと、また逢おう。また出逢える日までさようなら。』
さと、みく、ん。
俺は誰とも幸せになんてならないよ。
さとみくんをずっと待つよ。
だから早く生まれ変わって俺に逢いに来て。
きっと一瞬でさとみくんだってわかるから。
ずっと待ってるよ。
さとみくんからのボイスメッセージを聞いてから5年の月日が経った。
俺はまだすとぷりのななもりとして活動を続けている。
彼女?そんなのいないよ、俺にはさとみくんがいるから。
さとみくんを待つって決めたから。
きっとさとみくんは生まれ変わって俺に逢いに来てくれる。
フワッ
え、この香水……。
さとみくんがいつもつけてたバニラの匂い……
パッと振り返ると、小柄でピンクがかった栗色の髪をした女の子がいた。
その女の子は、ブラウンのチェックのミニワンピに白のブラウス、黒のタイツに厚底のピンクのヒールを履いていた。
見るからにかわいい女の子。
でもピンクがかった栗色の髪も香水の香りもピンク色の瞳も何もかもがさとみくんを連想させる。
な「ね、ねぇ」
女「久しぶりだね、なーくん」
な「さ、さとみく、ん、?」
さ「なーくん、待っててくれたんだ」
な「さとみくん、さとみくん、さとみ、くん……待ってた。ずっと待ってたんだよ……」
さ「待っててくれてありがとう。出逢えたでしょ?ね?」
また出逢える日まで。
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