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付き合っている2人
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「で、いつも一緒にいるって?」
やはり京がこの言葉を聞き逃しているわけがない。
「う、うん」
「どこがだよ。寮の部屋も違うだろ」
「だって、結局寝る間際まで一緒にいるし、朝も一緒にご飯食べるし、一緒に登校するし、お昼も一緒だし、帰りもだし、夜もだし……。俺の仕事にだって来るだろ!?」
「それでも一日の大半は教室じゃないか。そのうえ睡眠時間を6時間とすると、6時間綴と一緒にいないことになる」
真顔で話す京に少しだけ引いてしまう。俺は「そうですね」と相槌を打ち歩く速度を速めた。
「なんで逃げる?」
「だってなんか気持ち悪いもん」
「どこがだよ」
「やだやだ、来ないでくださいー。今日は部屋来ないでねー」
「無理、行く」
早足がいつのまにか小走りになり、小走りがいつの間にか追いかけっこになっていた。
鞄が揺れて、体が持っていかれる。でも、なんだか今は捕まりたくない気分だ。俺の全速力なんて京にはお見通しで、本気を出せばさっさと捕まえられるんだろうけど、それをしないのは優しさかな。呑気にそんなことを考える。後ろから聞こえる京の声も、なんだか遠い。俺、今すごく幸せだ。
「うわっ!」
石畳の道に突如突き出た石に、俺は躓いた。体が重力に引っ張られる。これ、今日で二度目だな、なんて思った。しかし、俺の体が地面に触れることはなく、代わりに体は両腕に絡め取られていた。背中に、京の温かさを感じる。
「何やってる」
京が呆れたような声を出した。そのまま体を引き戻し、俺の体勢が整うと手を離した。
「病み上がりで疲れてませんか?お坊ちゃん」
「なっ、疲れてません!っていうか、お坊ちゃんって、京もでしょ」
なんなら俺よりも良いとこの出じゃないかと思う。しかし、京はそんな俺の言葉をさらりとかわした。
「今月の仕事は休むように、俺から言っておくよ」
「え」
京はすでに歩き出していた。俺は京の斜め後ろを歩いた。京は少し早く歩いていた。
「じゃないと、綴はまた倒れるまで仕事するだろ」
「でも、今月は大切なお客さんがたくさん来るんだ。だから、お父さんも張り切ってて……」
「大切なお客さんは、俺だけで十分だろ。それに、なんのために綴の家には陰間がいるんだ。お前1人で仕事を回さないようにするためだろ。いくら売れっ子エースでも、仕事で体調崩したら元も子もないし。お義父さんもそんなことを望んでないはずだ」
京は俺が口を挟む隙を与えないように一息で喋った。強引な気もしたが、それほど俺のことを心配していると思うと悪い気はしない。幼い頃からずっと俺を見てきてくれたから、俺のキャパもなにもかも俺より知っている。
本当は任された仕事は果たしたい。それが俺が金扇家に生まれた宿命であり、俺が京に誇れる唯一だからだ。
「……じゃ、いいな。お義父さんには俺から伝えるから」
「ううん。そういうことは、俺に伝えさせてよ。もう子供じゃないんだから。京に言ってもらう必要ない」
それがけじめだ。父さんが無理やり俺を仕事に出すわけがない。ただ今までは、出来ない自分を自分で曝け出すのが辛かったから、京に伝えてもらうようお願いしていた。
「わかった。けど、後になってキャンセルできなかったとか言うのやめろよ?あと、トンズラするのも無しな」
「しないよ!」
今までの悪夢が蘇り食い気味に否定すると、京は笑った。
真面目な話をした後のこういう顔は反則だ。俺は顔が赤くなるのを感じた。それを悟られぬよう夕日から逃げるように俯いて、俺は京の腕に軽く触れた。
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