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付き合っている2人
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全寮制男子校、秀明学園中学高等学校。いわゆるお金持ちの家の子が通う名門校。
敷地は学園が建つ山一帯だと言われているが、真偽のほどは定かではない。しかし、広大な敷地を待っていることに変わりはなく、生徒が外に出ずともストレスの溜まらない設計になっている。
全寮制という名の通り、生徒は皆寮に入る。中等部と高等部合わせて4つの寮があり、中等部は東寮と西寮、高等部は南寮と北寮に分かれている。
俺と京は高校二年生だから、2人揃って北寮だ。
北寮は一番新しく建てられた寮だが、学園の意向でデザインは大正浪漫溢れる作りになっている。こげ茶のレンガ造りの壁には等間隔に白色のコンクリートが埋め込まれ、屋根は緑色の三角屋根。
玄関から中に入ると真っ赤な絨毯が敷き詰められていて、階段は木造というまさに芸術作品のような寮。この寮に入ってまだ2ヶ月ほどしか経っていないので、まだ見慣れない。東西南の寮に入ったことがあるが、ここまで目を引かれる作りではなかった。
昔から建てられていたという点では、以前の寮のほうが落ち着きがあったかもしれない。
部屋は階段を上った二階にある。階段を上るとちょうど階の中央に出て、俺は左、京は右に部屋がある。だから、いつもはここで一旦お別れだが。
「なんでついてきてるの?」
「今日は部屋に行くと言っただろ」
「それ、京が荷物置いてからってことなんだけど」
「別にいいだろ。俺も綴の部屋で勉強するから」
京はさらさら部屋に戻る気は無いようだった。諦めてついてくることを了承し、部屋の鍵を開ける。
高校からは1人部屋なうえに風呂もトイレも共用ではない。ストレスが減って一気に過ごしやすくなった。前はしょっちゅう京を部屋に連れてくることを、ルームメイトに悪いと思っていたのだ。
京は部屋に入ると一直線にベッドに向かいそこに腰掛けた。おじさんのような声を上げて、体を倒す。
「なんか久しぶりに座った気分だ」
俺は鞄を机の脇にかけた。
「北寮って校舎から遠いもんね」
「南寮の奴らが羨ましいな」
俺は窓から見える校舎に目をやる。遠くにそびえる校舎の奥には、南寮も見えた。校舎から続くここまでの道のりを目で追う。
「……でも俺は、京と一緒に帰れるなら、遠くても、全然……」
「何?」
「うぇ!?」
どうやら思ったことが口から出ていたらしい。幸い京には聞こえなかったようだが、自分は気を抜くといつもこうだ。
こういうことが京にバレると途端にうざったくなるから、あまり言わないようにしないと。
机の椅子を引いて座ると、俺は鞄からノートや教科書を取り出した。
俺は京のように予習復習無しで勉強ができるわけではない。本来なら、こんな進学校にだって通えないくらい頭が悪いのだ。
「もともと、高校に通う気もなかったんだけど……」
呟いた言葉から、懐かしい日々が溢れ出る。京に泣きながら説得されて、京に毎日勉強を教えてもらった。
「俺の未来には、綴がいなきゃダメなんだ」
今思えば小学生が吐くセリフではない。それでも、俺はその言葉に不覚にもキュンとして、単純に京の行く場所について行こうと思った。
京とこの先も共にいるのならば、京の隣に並ぶに値する能力や地位が必要だ。そのための学歴だった。
母には芸事はどうするのかと聞かれた。答えは勉強も芸事もやり遂げる、だ。体の弱い俺を両親は心配しただろうけど、ちゃんと両立できている……今日は倒れてしまったが。
「でも、京がいるから……頑張れるんだよなぁ」
俺は立ち上がり、ベッドに横になる京の顔を覗いた。綺麗な顔立ちをしている。色素の薄い俺とは違って、真っ黒な髪に少し日に焼けた肌。本人は焼けやすいことを気にしているが、俺にはそれがすごく格好良く見える。いつもは笑ってしまうが。
「京、好き……」
「ん……」
俺は慌てて京から離れた。突然寝返りを打つので起きていたのだろうかと心臓がバクバク脈打つ。大丈夫、か?
離れたついでに鞄からスマホを取り出すと、そのまま父に電話をかけた。ちらりと京の方を見ると、やはり眠っているらしい。微かな寝息が聞こえる。
「あ、お父さん? あのね、仕事のことなんだけど……」
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