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付き合っている2人
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京は立ち上がると俺の横を通り過ぎて歩いて行った。手は繋がれなかったが、ついてこいと言われていることはわかった。
「君達、さっき預けた夕食を」
「はっ、はい! 」
入り口付近には2人の男子が立っており、その手には俺と京のぶんの食事が乗ったトレイがあった。
京は「ありがとう」とそれを受け取ると、廊下に出た。
俺もそれにならい、トレイを受け取る。
お辞儀をして気がついたが、この2人は三年生だ。生意気なことをしてしまったと罪悪感が募る。正確には、失礼なことをしたのは京なのだが……。
いや、京がこんなことをしなくてはいけなくなったのは、俺が絡まれたからか。それに思い至ると、情けなくて仕方なかった。
先を歩く京は階段を登り、そこを左に曲がった。俺の部屋で食事をとるようだ。
京に続いて部屋に入り、電気をつける。京はサイドテーブルにトレイを置いてベッドに腰掛けていた。手招きをされる。
「鍵かかってなかった。不用心だぞ」
「あ、ごめん」
京はため息をついて、眉間にはシワを寄せている。
当たり前だが、機嫌が悪い。
俺はその横に座りトレイを置いた。正直狭いが、文句を言っている場合でもないだろう。
「くそっ、イライラする。せっかくの夕食が台無しだ」
「……ごめん、俺のせいだね」
「はぁ?」
「だって、俺が上手くかわせてれば良かったわけじゃん。そうすれば、京の手を煩わせることもなくて」
「あの場にいた誰一人綴のせいだなんて思ってない! 悪いのはどう考えてもあの男だろ。綴を傷つけて、逆上して……。あんなのが同じ学校にいるってだけで虫酸が走る」
いつもはそんなマナーの悪いことをしない京だが、今日だけはチーズドリアの真ん中にスプーンを突き立てていた。
スプーンと皿がぶつかる音がする。俺もスプーンを手に取ると、ちまちまと食べ始めた。美味しいのに、美味しくない。
「でも、あの人が言ってたことも間違ってはいないよ。陰間茶屋なんて、言い換えれば……ホ、ホストクラブと一緒だ」
「どこがだよ!」
「っっ!」
バンっとテーブルを叩かれ、俺は肩をすくめた。テーブルに置かれた手から、視線を上げていく。京は力強い目で俺の目を覗き込んでいた。
京の目に映る俺は、ひどく怯えていた。
「……自分で自分を傷つけることは、絶対にするな」
「別に、傷ついてなんてっ」
「じゃあなんでこんなに震えてるの」
ベッドの上の手に、京の手が重なる。重なった瞬間、ふっと震えが止まったことに気がついた。
今まで震えていたことに、そのとき気がついた。
「綴は、自分の家にも仕事にも誇りを持ってる。だから、ホストクラブって言われて傷つくのは当たり前だよ。別に、その職種が悪いわけではないけど、あいつは確かに悪意を持ってそう言った。綴まで、その悪意をわざわざ自分に向ける必要は無いだろ」
京の言葉は、まるで懇願だった。さっきまでの怒りの感情は鳴りを潜めて、悲しそうに俺の手を握りしめる。
俺は京を見ていられず、視線を目の前の食事に戻した。スプーンを持ち、ドリアをすくって口に入れる。
冷めてしまったそれを感じたとき、何故だかポロリと涙が流れた。
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