アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
台風のような子
-
昼休み、トイレから戻り教室に入ろうとしたとき、隣の教室、すなわち京のクラスの前をウロウロしている男子生徒を見かけた。
教室の入り口からそーっと中を覗いて、やめて、また覗く。たまに廊下をキョロキョロして、また覗く。挙動不審にも見える動きだった。
背は、俺より小さい。下級生だろうか。
そう思って上履きを確認すると、白を基調とした靴に黄色いラインが入っているのが見えた。一年生のようだ。
腕には大量のプリント(?)を抱えている。
困っているようにも見えたので、俺は勇気を振り絞って話しかけた。
「どうしたの?」
男子生徒は効果音をつけるならば「ビックー!!」という感じで飛び上がり、そろそろと振り向いた。
小動物を彷彿とさせる動き。要も大概ウサギさんだが、これはもっと小さな動物に形容されるだろう。
男子生徒と目が合ったとき、俺はそのあまりに整った顔立ちに胸がどきりと鳴った。京とは違う類の美形。可愛らしいという言葉がここまで似合う男子が存在するのだろうかというほどの、罪なレベルの顔立ち。漆黒を通り越して青色さえ見えるようなその髪。全てがパーフェクトのその男子生徒の顔に、俺は息を飲んで呆然としていた。
しばし二人で見つめ合ったあと、先に我に帰ったのは俺だった。
「あ、で、えっと、どうして2年のフロアにいるの? 大丈夫?」
スムーズに言葉が出ない自分を呪いたい。知り合いの前では普通に話せるが、知らない人だと途端に上手く言葉を紡げなくなるのだ。
俺は精一杯の笑顔を作って、その一年生を怯えさせないように努めた。しかし、一年生は未だ呆然とした表情のまま固まっている。
「……金扇綴」
「へ?」
一年生が微かに発した言葉は自分の名前のように聞こえた。だが、周囲の雑音もありそれが本当に俺の名前であったかは確信を持てない。
もう一度問いかけようとすると、一年生はまたもびくりと反応し、途端に顔を赤くして「あ、あ、あ、あの!!!」と吃りながらも話し始めた。
「これ! 今度の体育祭に関する資料の確定版です! これを、えっと……五十山京先輩に渡してください! お願いします!」
一年生はその資料の束を俺の胸に押し付けると、深くお辞儀をしてその場を去っていった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 569