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微妙な距離
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京とお昼を食べることが無くなった。
それは体育祭関連の仕事のせいではあるのだが、断られ始めたのが間宮君と京が放課後に残って仕事をしていた日の翌日からなので、なんだか少し不満だった。
二人がやましい関係にあるなど毛ほども思っていないが、それでも、一緒にご飯を食べられないくらい忙しいということは、その間間宮君と京が一緒にいるということなのだ。
間宮君、可愛いからな。
不満は結局そこに行き着く。京が俺以外を好きになることはほぼ無いと断言できるものの、間宮君の可愛さを前にすれば万が一ということはあるだろう。
「綴、なんでそんなほっぺ触ってんの?」
「ぅえ!?」
考え事に耽っていた頭が現実に引き戻される。
「そんなびっくりするか? 普通」
隣で苦笑していたのは陸だった。そうだ、俺は今陸と学食に向かっているのだった。
俺は無意識に触れていたらしい頬から手を離した。
「なんか、むにーって押したり引っ張ったりしてたぞ? 何考えてたの?」
笑いながら聞いてくる陸だが、いかんせんそれをしていた記憶がない。
しかし、考えていたのは間宮君のことなので大体その行為の理由に察しがつく。
「別に何でもないよ」
「何でもないにしては、なんかボーッとしてるよな」
陸の鋭い一言に、本音が漏れそうになる。
俺はどうにかそれを飲み込んだ。
「今日は何食べようかな。陸は何にする?」
話を逸らしたことに陸は気がついたようだが、それでも深く聞いてこようとはしなかった。
「俺はラーメン食いたい! でも、綴は教室で食べるだろ?」
「あ、でもラーメンでもいいよ。したら要呼ばないとだけど」
「そっか、じゃあどうしようかな」
考えているうちに学食にたどり着いた。
オシャレな内装の広々としたそこには、腹を空かした男子高校生が詰めかけている。秀明の学食は大きいが、いつも軽食コーナーは人でごった返している。
代わりに、定食を頼むコーナーはスカスカだ。
「俺、あの中で頼むの苦手なんだよね」
俺は戦争のようになっている軽食コーナーを見つめた。
俺は声が小さいのか、いつも販売員の人に無視されてしまう。
それに身長もあまりないので、人の波にもまれて財布を上に持ち上げるので精一杯だ。
京はよく俺の分の軽食を買ってきたりするので、どうやっているのか聞いたら曰く「人が勝手に避ける」らしい。
流石に嘘だろうと思うので、いつか見てみたいものだ。
「大丈夫か? 俺が行く?」
「ううん、こういうのもできるようにならないと進歩が無いっていうか」
「進歩……?」
財布に力がこもる。俺は意を決して足を踏み入れた。
見つけた隙間から人の中に入って行って、強引にでも前に前に進み出る。
まずは今日どんなホットスナックやサンドイッチがあるのかを見に行かねばならない。
男だから尚更かもしれないが、人の熱はどうしてこうも暑いのだろう。
顔や体に容赦なく力が加えられるが、俺はどうにか人の波から顔を出した。軽食を確認する。野菜サンドイッチがラスト一個!
「すみっぅ……すみません! 野菜サンドイッチ下さい!」
「150円です」
「はい!」
まさかの一言目で通じたことに感激した。サンドイッチを受け取ると、さっさと人並みから退散する。
入った場所と出てきた場所は大きく異なったが、どうにか陸の元に戻ってこれた。
「おかえり。いや、髪崩れすぎな」
陸は笑いながら俺の髪を整えた。
「ありがとう」
礼を言ってから、陸が手ぶらなことに気がつく。まだラーメンを迷っているのだろうか。
「ラーメン、どうする?」
「んー、せっかくだし食う! できるまでに要呼んでこようよ」
「わかった」
頷いて陸について行こうとした時だった。視界の端に、京が映り込んだ。
「っ……」
そして、京の向かいには例の間宮君が座っている。
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