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微妙な距離
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どうして、なんで。
二人は一緒にいるの。
今日俺は京からご飯を断られて、きっと仕事が忙しいんだろうと思った。それなのに、まさか間宮君と食べているなんて。
いや違う、忙しいから、二人同時に食べてるんだ。そっちのほうが都合が良いから。
そう結論づけるものの、俺は視界から二人を外すことができなかった。何を話しているのかは聞こえない。
しかし、お互いに気を許しあっているような、そんな雰囲気は感じ取れる。
「綴ー? どした?」
一向についてこない俺に気がついた陸が戻ってきた。そして、俺の視線の先を見てから「あぁ」と納得したような声をあげる。
「五十山と間宮冬樹か」
「え、間宮君のこと知ってるの?」
意外な事実に驚くと、陸も首を傾げた。
「有名人だろ、あいつ」
「俺、この間知ったばっかり」
「マジ!? えぇ、どんだけ箱入りなの」
陸はすぐに説明してくれた。
「間宮冬樹、去年辺りから名前を聞くようになったよ。中等部に、いっつも日傘さしてる超絶可愛い男の娘がいるって。男子校ってさ、もともと同性愛者じゃなくても好きになっちゃうこと多いらしいじゃん。間宮はその典型らしいよ。いろんな生徒が告白して振られたって。簡単に言うと、超可愛いモテ男? なのかな」
「へぇ……」
確かに、彼がものすごくモテるだろうことは容易に想像がつく。あのルックスで真正面にいられて、赤面したり動揺しないほうがおかしい。
その点、京は動揺しているようには見えないな。やっぱり二人の間には何もないんだ。
「にしてもあれだな。美形が揃うとああもお似合いに見えるんだな」
「お似合い?」
聞き返すと、陸が笑って頷いた。
「どう見てもお似合いだろ。ま、付き合ってないだろうけど」
はははと笑う陸を横に、俺は笑えなかった。
陸の言うとおり、二人はまるで世界が違っていた。同じ空間の食堂にいるはずが、そこだけ切り取られた絵画と言っても過言でないようなオーラがそこを包んでいる。
俺と京が付き合っていることを陸が知っていたら、きっと陸はこんなことを言わなかっただろう。
知らないからこそ、陸の言葉が胸に刺さる。傷つく必要は無いのに、深く俺をえぐる。
「……やっぱり教室で食べよう」
「え」
俺は陸の手首を掴んだ。
「ラーメンはまた今度にしてよ。俺その時なら奢るから」
「は、いや、別に奢んなくてもいいけど、突然どうしたよ。おい!」
京と間宮君を視界に入れないように、下を向いて食堂を出た。心はもやもやと晴れなかった。
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