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微妙な距離
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緊張してきて胸のあたりを抑えた。
京が扉を開けてすぐ、こちらに背を向けて紙の束をまとめる間宮君の姿が見えた。
彼はすぐにこちらに気がついてパッと振り向いた。京の顔を見ると、満面の笑みを見せた。
「京先輩!」
「間宮、今日から一緒に仕事をする金扇綴だよ。前に話しただろ?」
「はい!」
間宮君は立ち上がると俺の前に立って「よろしくお願いしますね!」と元気に挨拶をした。
食い気味なそれに押されながらも、俺はどうにか「よろしく、お願いします」と答えた。
「で、仕事なんだけど」
場を取り仕切るように、京が手を叩いて話し始める。
「間宮はそのままホッチキスで留める作業ね。綴は、そこに溜まってる網を直して欲しい。切れてたり解れてたりするから。直し方の紙は……」
京は部屋の奥に置かれている網をごそっと机の上に乗っけると、後ろの棚のファイルを探した。
そして「あったあった」と数枚の紙を取り出す。
「これ見て直して。去年もやったから要領はわかると思うけど」
「わかった」
俺が席に着くと、それにならうように間宮君もその向かいの席に座った。
京が部屋を出ていくと、それまで隠されていた気まずい雰囲気が姿を現した。
いや、もしかしたらそう思っているのは俺だけなのかもしれないが。
間宮君は別に何もしてきてない。ただ、なんとなく、ちょっと気になってるだけ。
俺は目の前に置かれた競技用の網を黙々と紡いだ。
一回二回使用しただけでここまでボロボロになるとは。
いくらお金持ちで体育会系でない生徒が多いこの学園でも、高校生男児は侮れない。
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