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年下のライバル
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冬樹君は話し上手で、俺を飽きさせない。
京が不機嫌なのが気になるが、まぁ体育祭が終われば冬樹君との関わりは必然的に少なくなるし、今くらいいいだろう。
「先輩は夏休み、何か予定はあるんですか?」
「夏休み?」
そういえば、体育祭が終わればもう夏休みはすぐそこだ。
うーんと頭を捻り予定を思い出す。
例年だと大体仕事が入っていて、お盆期間中だけは金扇家と五十山家で旅行ということが多い。多分今年もそんな感じだろうか。
「もし無かったら、僕とどこか行きませんか?計画なら僕が立てますので!」
「え、えぇ、それは……ちょっと……」
楽しそうではあるのだが……。
ちらりと横にいる京を見た瞬間、京の持っていたフォークがブスリと肉に刺さった。
「予定が無いなら、是非僕と……「悪いけど」」
京は冷たい笑みを浮かべて冬樹に笑いかけた。
「俺達毎年夏休みは長期の旅行なので」
ゴゴゴと効果音のつきそうな真っ黒なオーラを放つ京は、刺さった肉を豪快に平らげると俺の手を取って立たせた。
「会長、なんだか綴がジュースで酔ってしまったようなので今日はこの辺でお暇させていただきます」
京がとんでもない嘘をつきギョッとする。しかし、会長こそ酔っているのか頬を赤らめながらニコニコと答えた。
「え、あぁ、そう? 綴君だいじょーぶ?」
「あ、いや、俺は全然……!」
「すみません。失礼します。今日はお疲れ様でした!」
引っ張られるようにして店を後にする。
熱気のあった店内から一転、夜風が頬を心地よく撫でていった。
街灯が点々と灯る下を、京はズンズンと進んでいき俺はそれについていくのに必死だった。
「待ってよ! 京! あっ!」
足がもつれて転びそうになると、やっと京は止まり俺の体を支えてくれた。胸に抱きついた形になり、そのまま京の顔を見上げると、案の定拗ねていた。
「……腹立つ」
京がポツリと呟く。
「あー!! 腹立つー!!なんだよあいつ!!」
かと思えば、鬱憤を晴らすように大きな声で叫んでいた。
久しぶりに聞いた京の大声に目を丸くして固まっていると、京はせっかく整えた髪をぐしゃぐしゃとかき回した。
「間宮の奴、いちいち俺見てはニヤニヤしやがって。ほんっとうムカつく奴だな、全く!」
「え、そうなの?」
全然気がつかなった自分の鈍感さに引いてしまう。
「はぁ、あれが間宮の本性だな。まぁ、前の猫かぶりの完璧人間よりはだいぶ気持ちが良いが……」
京がまた歩き出したので、俺も続いた。
「綴も綴だよ。何でたまに間宮に赤くなってるの」
「それは仕方ないだろ! だって、だって……」
反論しようとしたところで昼間の告白やらキスやらがありありと脳裏に浮かんでくる。思い出そうと思えば思い出すことのできる冬樹君の唇の柔らかさに、またも頬が熱くなる気がした。
「? 何?」
問うてくる京の顔をまっすぐに見れない。俺は指を胸の前で遊ばせ、どう言い繕うか悩んでいた。
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