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金扇屋の陰間達
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鶫は腕を解くと、キラキラと輝く目で俺を見上げた。
「僕、柊兄様が今日帰ってくるなんて知りませんでした!」
「あれ? お父さんが伝えてなかったのかな?」
「なーんにも言われてませんよ! だからこれはサプライズです! 嬉しい!」
天真爛漫な鶫に癒される。
鶫は去年入ってきたばかりの男の子で、まだ14歳にもなっていない。
陰間デビューして間もなく、今もきっと裏口の掃除をしていたところなのだろう。手が汚れている。
ちなみに柊というのは俺のこの街での花名であり、少年の鶫という名もそうだ。この街にいる限り、芸者を本名で呼ぶのはルール違反である。
「鶫、もうここの掃除はいいの?」
手が止まって俺の元でキャッキャしているので問うと「もう終わったからいいんです!」と俺の手を引いて屋形に入ろうとした。後ろを振り返ると、雑草を掘り起こした土がそのままだ。これは多分他の兄達に叱られるだろう。
「椿や空木兄様に怒られるよ?」
この2人は兄弟の中でも特に口うるさい。また、2人の中でも椿はピリピリしていることが多いので、弟達からはあまり好かれていない。
そんな椿が、俺の同期なのだが。
叱られる前にと注意した俺に、鶫はむぅっと口を膨らませた。そして、下駄を鳴らして家の中に入る。やらないようだ。
「僕は悪くありません。本当に悪いのは寛太です」
「寛太……あぁ、そういえば寛太はどこにいるの?」
寛太はこの家で一番幼い12歳の男の子だ。今春小学校を卒業し、金扇屋に入った。まだ陰間見習いであり、正式デビューは果たしていない。
本来、店の前の掃除や家の掃除、他の兄様達のお手伝いをするのはその陰間見習いで、先程鶫がやっていたことは寛太がするはずなのだ。下から二番目の鶫なので、今も陰間でありながら雑用をすることがあるが、それでも朝一番に起き働くべきは寛太である。
「寛太はまだ寝ています!!」
鶫は大声を上げて拳を握った。
夜が遅い陰間達はまだ眠っているので、俺はしーっと口の前に人差し指を立てた。
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