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内と外
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無機質なアラーム音に目を覚ますと、部屋の中はオレンジ色に染まっていた。また、一階からはバタバタと人が歩く音が聞こえる。みんな夜の仕事の支度をしているのだろう。
衣装用の下着に着替え肩を出し、化粧が着物に付かないように注意して施していく。芸者のような白塗りという暑化粧はしないが、それなりに肌は白く見せるし口紅や目尻に紅を入れる。最初は抵抗感を持つが、次第に慣れて化粧が上手くなる子がほとんどだ。
一階に降りると、一番奥の化粧室に人だかりができていた。
「ちょっと、早くしてくれない? 後ろ詰まってるんだけど」
「すいません兄様」
空木兄様が花鶏を急かし、隣の鶴が「そんな怖い顔でお座敷に出たら呼ばれなくなっちゃいますよー」と茶々を入れる。度胸があって感心する。
化粧室の隣もまたピリピリとした空気が漂っていた。衣装部屋であるそこには椿が立っていて、鶫と寛太が着付けの手伝いをしていたが寛太が何やらもたもたしている。
「鶫! 急いで!」
「はい!」
鶫の動作が遅れるのは寛太のせいだが、その寛太の面倒を見きれていないのは鶫だった。
俺も着付けの用事でこの部屋に用があったのだが、椿が終わらないことには始まらない。
俺は先回りして椿にしごきを巻き、さっさと帯を結び帯留め、帯揚げを付けて完成させた。衣装を一人で着ることはできないので、さすがの椿も何も言わなかった。
「寛太、柊兄様の着物出しておいて」
椿が出来たら次は俺の番。彼らに休む暇などなかった。鶫に指示された寛太は急ぎ、群青色の着物を取り出した。
その間に半襟やら何やらを身につけ整えてさっさと着物を羽織る。
「寛太、杜若兄様か満作兄様呼んできて」
「はい」
鶫も寛太もまだ帯を締められない。下にずり落ちないように力強く結ぶには、兄達の力が必要だった。
やってきた満作兄様に帯を締めてもらい完成すると、俺は寛太に仕事用の籠を持ってくるよう指示して父の部屋に向かった。
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