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内と外
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裏口には始めのお座敷を共にする椿と、籠を持った寛太が立っていた。
俺が寛太から籠を受け取ったのを見ると、椿はさっさと一本歯の下駄を履いて外に出て行ってしまった。
「いってらっしゃいませ、兄様」
寛太の緊張したような声に一礼し、俺は急いで椿の後を追った。
衣装を着ている時の下駄は基本一本歯の下駄である。不安定だが慣れれば歩くことは容易く、雨の日には水飛沫が着物に付かないので重宝する。
さっさと歩く椿に追いつき横に並ぶと、早速刺々しい言葉が俺を待っていた。
「遅すぎてイライラした」
「ごめん。お父さんにいろいろ報告してて」
寛太のことを話すと、父は「お師匠さんにも話を聞いて必要であれば見世出しを遅らせる」と言った。
流石に元の施設に返した方がいいとまでは言えなかった。
鮮やかな夜の街を歩く俺たちを、昼間よりも多くなった観光客が取り囲む。
芸者や陰間が花街を歩いている姿が絵になるのはわかるのだが、こんなに人がいては風情などあったものではない。
椿は彼らに一ミリも愛想笑いを見せず、あからさまに嫌そうな顔して歩く。それだと自然と人が道を開けるのだ。俺もやりたいところだが、なにぶんそういうことは苦手だった。
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