アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
「可哀想」な子供
-
忘れていた頭痛がぶり返し、ガンガンと痛む頭を抑えて学園に着いた。
平田さんにお礼を言ってから、守衛さんに門を開けてもらう。
学園敷地内での生活は息苦しくなることもあるが、今はその地面を踏んだだけで嫌なことから目を背けられる気がした。
寮までの長い道のりを歩く。
部屋に着くと、荷物を床に置いてベッドに直行した。
着替えるのも面倒くさい。ご飯も食べたくない。
いつの間にか寝ていたらしく、コンコンというノックの音で目を覚ました。
「綴? 帰ったの?」
京の声だった。綴と呼ばれるのは約3日ぶり。帰ってきたのだと安心した。
「ごめん、今日はこのまま寝るから……」
力なくそう訴えると、京は「そう……おやすみ」とそれ以上問い詰めることなく去っていった。
お腹が空いて、でも頭は痛くて、何も食べたくなくて、気持ちが悪い。
今顔を見られたらまた過保護な京が現れそうだから、部屋に入ってこられなくて良かったと心底思う。
目を閉じると、鶫や、椿や、寛太、杜若兄様、鶴、花鶏の顔が浮かんでは消えた。
考えたくない、何も考えたくない。
大丈夫、大丈夫。明日にはきっと、元気になっている。
そう自分の心を宥めて、俺は深い眠りについた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
82 / 569