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夏の始まり
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コツコツ、コツコツと。規則正しい足音の中に、タッタッタッタという音が聞こえた。なんだろうと振り向いた瞬間、後ろから何かに突撃される。
「おはようございます! 綴先輩!」
「冬樹君!」
冬樹君はチャームポイントの日傘の下でにこりと笑っていた。会うのは何気に久しぶりである。
「ついに終業式ですね。夏休みの到来!」
冬樹君は嬉しそうにくるりと回ってみせた。日光に当たれない冬樹君は、青色の長袖ワイシャツにベストを着用している。
「そうだね。て、あれ、どこから来たの?」
一年生は南寮なので、俺たちの北寮とは真逆の位置にあるはずだ。しかし冬樹君は俺たちの後ろからやってきた。
「綴先輩に会いたくて、出待ち? してました」
ゾッと悪寒のようなものが背中を這うが、どうにか気づかないふりをしてやり過ごす。
「だって、学校で会おうにも全然2年生のフロアにいないんですもん。一体どこにいるんですか?」
「どこって……」
答えようとして、右側を歩く京の威圧感に思わずおし黙る。
ここ数日、俺は教室や食堂で昼食を取っていない。
理由は言わずもがな京である。
「今日は外を見ながら食べたい」だの「手作り弁当はピクニック気分で植物園で食べよう」だのと言っては俺を連れ出し、外のベンチや校舎の隣にある植物園の休憩スペース、屋上などで昼食を共にしていた。
これが原因だったのか……。
京も随分大人げないことをする。
どう答えたものかと考えていると、体を右側に押されて気がつくと真ん中を歩いていたはずが、真ん中は京になっている。
「ごめんね。お昼休みは俺達の憩いの時間だから、お子様に構ってる暇はないんだ」
「ちょ、ちょっと!」
「何ですか突然! 僕は綴先輩と喋ってたんです!」
冬樹君はそう言うとくるりと後ろを回って俺の隣にやってきた。京がふくれっ面をする。
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