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夏の始まり
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「あちー、この暑さだと、帰りたくても帰りたく無いよなー」
「わかる。学園にいたほうが涼しいよね」
「綴は東京だろ? 俺絶対無理」
「陸は福島だよね? 涼しそうだけど」
「ぜんっぜん! 東北は涼しいとか幻想だからな」
「……あんなの、寝れるわけないって……」
後ろを歩いていた要が、ボソッと呟いた気がした。ちらりと後ろを見ると、憂いを帯びたような目で、窓の外を眺めている。
「綴?」
陸の声にハッと我に帰り、前を向いた。
「何?」
「いや、なんか上の空だったから……どうした?」
「なんでもないよ」
そう取り繕ろう。実際なんでも無いのだし。
聞き間違い、かな。
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