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後ろ向きと君の覚悟
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テレビには可愛らしい動物が様々映し出され、それらの仰天映像だとか、芸能人のふれあい体験などが流れている。
そこで流れたある動物に、俺の目は釘付けになった。
モルモットという動物だ。
うさぎより一回り小さい体、短い手足、小さな耳に、つぶらな瞳。ヒクヒクと動く鼻、愛くるしいたらこ唇。絶妙なバランスで配置されたそれらが合わさると、なんとも間抜けな顔になるのがまたとても可愛らしいのである。
何を考えているのかさっぱりな表情に、唐突に繰り出されるポップコーンジャンプ。
これが可愛くないわけがない!
テレビに映っているモルモットは有名女性芸能人の腕に抱かれてキョロキョロしている。
俺も一度だけ動物園で触ったことがあるのだが、当時はまだ幼かったため動物に対して拒絶反応が出てしまってすぐに取り上げられた。それ以降母からお許しが出ずに動物園には行けておらず、モルモットへの愛は年々増しているような気がする。
大人になったら絶対にモルモットを飼う。今は犬も猫も触れるので大丈夫なはずだ。
テレビの中のモルモットが「もきゅ」と可愛らしい鳴き声をあげた。
「わぁ、可愛いね、京!」
そう言って京のほうを向くと、京は俺の肩にもたれたまますうすうと寝息をたてていた。
こんなに早く眠ってしまうなんて、本当に疲れていたらしい。
俺は京の頭を撫でて、そのあと鼻を押したりして、これが嘘寝でないことを確認した。
あんまりうるさくするのも申し訳ない。俺はテレビの音量を下げ、京の頭を自分の膝にゆっくりとおろした。
微かにテレビの音が聞こえる部屋で、俺は京の頭をゆっくり撫でてその髪の手触りを楽しんだ。
人の気配がほとんどしない家。大きくて解放的だが、一人でいるには寂しすぎる。
京は時々家の手伝いで彼の父に呼び出されるのだが、それを断る理由がよくわかる。
京からすれば、あの箱庭も、この家も、本当に気が休まる場所ではないのだろう。
もしかしたら、京は生まれてこのかたそんなものを手にしたことがないのかもしれない。
ただ、ここに帰ることに比べれば、寮にいた方が気楽でいられるというだけだ。
いつか、二人きりでどこか遠くへ行ける日がくればいいのに、なんて、できやしないのに、思ってしまう。
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