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俺達は勇者第三部隊として魔王四天王の一人、アンデッドの王ドストミウルのアジトへと潜入した。
第三部隊というのは、王都より派遣された勇者部隊の言わば三軍だ。魔王討伐をするのが本当の勇者と言われる一軍。その補助をする二軍、我々はその更に下の補欠メンバーのようなパーティーだ。
とはいえ選出された奴らは非常に優秀だ。
剣士のミリオ、彼女は女性一の剣士と呼ばれる腕を持つ凄腕だ。
大盾使いのノエル、細身のくせに怪力女で素手でも強い。
魔法使いのキルティカ、炎の魔法が得意でちょっとドジだけど回復もできる秀才魔女だ。
そしてこの俺、弓使いのカノル、遠距離魔法と掛け合わせてカウンターなんかも得意だ。
どうして女ばかりのパーティーになったか、というのは便宜上の問題で仕方の無いことだった。俺は特別女が嫌いって訳でもないし、特別女好きでもない。それに俺のパーティーの女共は皆強気で下手に手を出しても瞬殺されるレベルだ。だから、すごく仲がいい訳ではなかったが仕事上の付き合いとしてはそれなりに上手くやっていた。
今回の敵は魔王四天王の一人、アンデットの王ドストミウル。死の王とも呼ばれている。
強さを測る調査としての任務だったが、もしも倒せてしまったらそれはそれで俺達の株が上がる。そんな期待も秘めた任務だった。
その化物のアジトに乗り込んだ俺達は数々の敵を倒し、トラップを抜けた。アンデッドの根城と言うだけあって、ゴースト、スケルトン、ゾンビや虫系が多い。
女が多いパーティーとは言っても、一応王都からの派遣部隊だ、気持ち悪がったり悲鳴をあげたりして逃げ出すものはいなかった。
そして、その道の果てにそいつはいた。
初めて見たのその姿は非常に禍々しいものだった。
人の骨格はしているものの、纏ったボロボロ布から見える継ぎ接ぎの髑髏顔に眼球は無く、暗い空洞があるだけ。肋骨が剥き出しの胸の隙間からは無数の赤い亡霊のような骸骨がうねり悲鳴を上げている。脚はなく黒いオーラと共に尾のように脊髄が揺れる。死をまといながら浮かんでいるその姿に対峙するだけでも恐怖を抱いた。
戦況は初めから悪かった。
もちろんアンデッド耐性の武器や防具を揃えてきたし、魔法使いのキルティカだって弱点になる光魔法をふんだんに使っていた。
それでも、力の差は歴然だった。
敗走するしかない、と判断したのはリーダーのミリオだ。もう皆体力も魔力も使い切る寸前だった。ノエルが対魔防御の魔法を唱えると、キルティカがありったけの光魔法をぶつける。
最後に俺が光効果付きのトラップを仕掛けてから全員で逃げ出す。
キルティカの魔法でヤツが怯んだところは見えた。少しは時間が稼げそうだ。
最後に攻撃を放った俺はパーティーから少し遅れて走っていた。元々はスピードには自信があるからこれくらいの差はすぐに縮まる、そう思っていた。
雑魚エネミー達も俺たちを逃がすまいとぞろぞろと追いかけてくる。
そして、殺気を感じてちらと背後をみると。
死の王、ヤツもまた浮遊しながら俺たちを追ってきた。
しかも、ヤツは早かった。雑魚共の上をスイスイと泳ぐように抜け、もう俺の背後まで近づいていた。
まずい...そう思った瞬間キルティカが魔法詠唱している事に気がついた。ありがたい、そいつを当ててくれればまた少し怯んでくれるかもしれない。
ふとそれが光魔法では無いことに気がついた。彼女のその長い詠唱は、たしか...
「全てを吹きとばせ、メガバーストっ!」
彼女お得意の火魔法、その最大出力の爆破魔法が展開された。
しかしそれは、俺の背後に向けられたものではなかった。
目の前に赤々と広げられた魔法陣からは炎と激しく爆発音が響き渡り、建物ごと破壊して行く。逃げ道を失った上に、熱い炎で弾け飛んだ俺は死を覚悟した。
爆風と熱が一気に押し寄せて全身に痛みが走る。自分がどうなっているのか全く分からない状態がしばらく続いた。
あたりがしんとして、まだ意識がある事に気がつく。でも、瓦礫に手足が埋もれて身動きが取れない。左目にひどい痛みを感じる、よく分からないけど鋭い破片でも刺さっているようだ。砂埃が酷く呼吸も苦しい。
このまま死ぬんだと思った。
だが、死は俺をそう簡単には受け入れてくれないようだ。だって、俺の顔を覗き込むように現れた影は紛れもなく、あの、死の王の姿だったからだ。
「裏切られたのか、ヒトよ...」
地の底から響くような声がそう言った。
そうか、俺は裏切られて死ぬのか。最悪だと思った。それともすぐに死ねずにこいつにいたぶられてから死ぬのだろうか、拷問でもされて死ぬより辛い思いをさせられるのだろうか。
裏切られた絶望感に支配された思考はそれすら恐怖とは思わなかった。
「どうにでもしてくれ。」
干からびたような声でそれだけ答えると俺は意識を手放した。
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