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醤油事件
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いつからだろう…?
気が付いたら、俺は彼を見ていた。
目が合うだけでドキッとする。
声を聞くだけで口から心臓が飛び出しそうだ。
何度、気持ちを打ち明けようと思ったか分からない。
でも…打ち明けられるわけがない。
気持ちを押し隠したままで、俺たちは成長した。
そしていま、
俺は多分、幸せに包まれている。
なぜなら彼が、この手の中にいるから………
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「ご飯、出来たよ。食べる…?星(あかり)…」
背中から俺が声をかけると、星(あかり)はぱあっと瞳を輝かせた。
「え、いいの?ゴメンね、用意させちゃって…、…、っ…、っしゃ!いいタイミング…!」
ちょうどボス戦に入ったらしく、手が離せない。
休前日はだいたいお昼前に俺の家に遊びに来て、テレビの前のソファーに座ってゲームを始め、夜は泊まり。
そのまま土曜と日曜を俺と一緒に過ごし、学校が始まる日の早朝に自分の実家に帰る…。
それが星(あかり)のお気に入りの休日の過ごし方だ。
ちょうどスキルゲージが溜まって大技を入力できたらしい。こっちを見ないで返事してきた。
食事の用意なんて。
そりゃ…、イイに決まってるだろ。
「ん。いーよ。星(あかり)の好きな海鮮丼にした。イクラ大盛り。それとサラダ」
「え?何…?………ッア!この…!!回復、…ぅわ、えげつな!!ちょ!だ…っ」
俺の話しかけに応えようとしながらもゲームに引き戻される星(あかり)…。子どもみたいなその様子に、俺はごく小さく息を吐いた。
……このゲームは星(あかり)のお気に入りだ。
うちに遊びに来る理由の85%を占めていて、一度やり出すと止まらなくなる。
ま、それを分かってて買ったんだけど。
俺は星(あかり)のためなら何でも出来る。
とりあえず海鮮丼にラップをかけて、調理器具を洗っていたら
「アー…ダメだー……全然勝てねぇ〜…」
どうやらボスに負けたらしい。星(あかり)はがっくりうなだれてコントローラーを置くと、ぽてぽてキッチンの方にやって来た。
「うっわ。美味しそう…!あっくん、こんなの作れンの!?天才だな!」
星(あかり)はキッチンのテーブルに置かれた海鮮丼を発見して声を弾ませた。
さっき俺がかけたばかりのラップをいそいそ外してる。作りたての海鮮丼はまだご飯が冷め切っていなく、
「あったかい…!マジ美味しそう!」
海鮮丼は見られただけで星(あかり)の胃袋をがっちり掴んだらしい。ナイス、海鮮丼。
星(あかり)は洗い物を終えて手を拭いている俺に嬉しそうに近寄ってきた。
飼い主にジャレつく猫みたいだ。
ピンと立った耳としっぽが見える。
「ね、食べよう?…ね、スプーンこれ持っていくね?」
「ん、ありがと」
うっわ、可愛い…。
俺は星(あかり)のそういうところが、……、…、
…とか考えてたら、テーブルに持っていくためにカウンターに用意していたお醤油がふと目に入った。
「ア、待って、コレも…」
「…んー……?」
呼び止めたら振り返った星(あかり)とパチッと目が合った。
「……っ…!!」
「…ん?何だよ」
「や、…いや、だ、大丈夫」
…タラタラ…… ……
「…あっくん………お醤油、こぼれてるよ…?」
首を傾げながら、俺を誘導するみたいに足もとを指差す星(あかり)。可愛すぎだろ。その視線を追って下を見た俺は……、
「うっわ…!?た、…ちょ……!!」
醤油まみれになった可哀想な床と自分の足を見て青くなった。
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