アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
旭さんの話1【星(あかり)パパ視点】
-
毎週、週変わりで放送する映画を観るのが好きだった。
このごろ、放送局はほぼ近年流行ったものしか放送してくれない。けれど僕が学生の頃は、生まれる前に流行った映画なども時折放映してくれていた。
そういう昔の映画を観るのが何となく興味深く、好きだった。
カッコいいアクション映画には釘付けになった。
謎だらけのミステリーもゾクゾクした。
恋愛映画にも憧れた。
ただ、ジャンルは違っても、大ヒットした映画というのは大抵、1人の男と1人の女の一途で真っ直ぐな恋愛が織り込まれている…。
いつか僕にも生涯たった一人だけ、愛せる人が出来たらいいな……
そう本気で思っていたあの頃だった。
まぁ、その願いは叶ったけどね。きみだよ綾ちゃん…。
うん、ごめん、話を元に戻そう。
僕が受験生になった年だった。
外国で起きた連続不審死が、毎日ニュースやワイドショーなどで大きく取り沙汰されたことがあった。
……綾ちゃん、きみは覚えているかな?
そう。…あの一連の事件だよ。
日が経つにつれヒートアップする報道。
猟奇的と思える不審死の概要はこうだ。
喉や首筋に、牙を持つ動物に咬まれたような痕が残されていること。
性別は男女様々だが、比較的若い人が多い。
そして最大の特徴は、その死因が急激な大量の失血によるものなのに、ほかになんら大きな怪我などは一切見られないことだった。
傷はその、喉や首筋の咬み傷だけだが、そこから大量に流血している様子もない……、つまりあまり血に濡れていない。
事件が取り沙汰されるようになる前の週の週末に放送していた映画がたまたま吸血鬼ものだったために、メディアは一斉にそれらの不審死を吸血鬼によるものではないかと煽り立てた。
吸血鬼なんてそんな非現実的な生き物、この世にいるわけないだろう。
僕はそう思っていた。
けれど僕の考えとは全く真逆の方向へ、世の中はグイグイ動いていった。
ファンタジーやSFの世界でしか見られないそんな異形の生き物が、さもヒトと背中合わせに息づいているかのような風潮が極限まで高まったのは、日本でとうとう最初の犠牲者が出たときだ。
あれは北陸の山奥深くで怪しい死を遂げた男性の遺体が、ハイキング途中の老夫婦にたまたま見つかったことに端を発する事件だった。
死後たった1日しか経っていないその遺体には全身の血がほぼ残されていなく、首筋、耳の下5センチほどの位置に残された2つの赤い穿孔。
外国で多発した連続不審死事件と共通した特徴がありありと残されていた。
その後、同じような遺体が次々に発見され、日本中が見えない恐怖に震えあがった。
犯人は一体誰なのか。
単独でやっているのか、複数犯か。
男なのか、女なのか。
なぜ、全員が首筋や喉に似たような傷をつけ、同じ失血死なのか。
凶器は…?
事件は迷宮入りの様相を呈してきた。
なぜなら残された遺体は年齢もバラバラ、性別もバラバラ、発見される場所も、時間帯も全てバラバラ。
職業も、家庭の経済事情もバラバラで、全員全く共通点が見つからなかった。
つまり手掛かりとなりそうなファクターは1つも残されていない。
最初のうち自殺として片付けようとしていた警察は、被害者が5人を超えて初めて事の重大さに気が付いたらしい。
遅まきながら躍起になって犯人を探し始めた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
30 / 100