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時間が経つのは早く、気がつけば集団宿泊当日。
俺を含めた一年生はバスに乗って宿泊先へと移動していた。
しかし普段バスに乗らないせいか、俺は一人だけ地獄の時間を過ごしていた。
「死にそう……」
「吐きそうか?ほら水飲め」
「吐かないけど、お腹が気持ち悪い…」
毎朝学校には電車で来ているから、と余裕でいた結果がこれだ。
やはり揺れといっても一概には言えないようで、バスに乗った数十分後に俺は完全に乗り物酔いしていた。
心配してくれる芽鶴に介抱されながらどうにか気を紛らわそうと外の景色を眺めるが、あまり効果はない。
ずっと波の上の船で転がされている気分だ。
「百馬前の席に行ったら?先生に伝えるけど」
「ん〜〜」
「駄目だなこれは」
後ろから亜太の笑い声が聞こえるが、今は悪態をつく余裕もないくらいしんどい。
フルスピードでかっ飛ばして早く宿泊先に着いてほしい。
折角の楽しい時間の中、俺だけ憂鬱な時間を過ごしていると、前の方から先生の声が聞こえた。
「みんないいかな?パーキングエリアに着いたら十分だけ休憩時間を取るので、そこでトイレ等は済ませるように!」
「だそうだ、もう少し我慢できるか?」
「う〜ん…」
先生と芽鶴の声も上手く耳に入ってこなくて、ただ唸る。
休憩…外に出たい。そして早く帰りたい。
バスがこんなに地獄だとは思いもしなかった。
悲しくなって涙を滲ませていると、いつの間にかバスはパーキングエリアに着いたのか、揺れが止まった。
ぐったりとしたまま芽鶴と亜太に連れられバスの外に出る。
開いたスペースに座り込み、深呼吸をして外の空気を取り込むと少しマシになった。
「大丈夫?穂中くん」
「斉藤せんせー……」
心配そうな顔で話しかけてくれたのは俺らのクラスの副担任、斉藤先生。
まだ入って新しい先生だけど、優しくて可愛いから稲見先生同様生徒から人気だ。
ちなみに俺の部活動顧問でもある。
「前の席空いてるからそこに座る?後ろより前の方が揺れにくいと思うけど」
「そうします…」
「分かった。それまでここで休憩しとこっか」
休憩時間中、斉藤先生は俺の気を紛らわそうと色々な話をしてくれて、俺の傍にいてくれた。
しばらくしてバスの出発時間がくる。
斉藤先生に案内もらい一番前の窓際の席に座った。
最初よりは楽になったけれどまだ気持ち悪さが抜けない中、窓に体を預ける。
これからまた一時間揺られるのかと思うと、気分は憂鬱だ。
もういっそ寝てしまおうとそのまま瞼を閉じると、隣で誰かが来たような音がした。
「大丈夫か?吐きたい時はちゃんと言えよ」
「ん……えっ?」
横から話しかけられて誰かと思えば、そこにいたのは稲見先生。
なんで、って驚いたけどこの席は元々稲見先生一人で座ってたみたいだ。
な、なんかいつもする時みたいに距離が近くてどきどきする。
ここはバスだし、変なことするはずないと分かっているけれど意識してしまう。むしろ意識するなって言う方が無理だ。
一人で気を逸らそうと窓の外を見つめる。
すると何故だか分からないが、突然先生は俺の首元に手を伸ばしてきた。
何をするんだろうと眺めていると、シャツのボタンをぷちんと外されぎょっとする。
「せ、先生…?」
「酔ってる時はあんまり締め付けない方がいい。バスの中は外してていいから」
「あ、……分かりました」
ベルトもな、と付け足す先生に倣って、全部緩める。
すると感じていた苦しさが無くなって少し楽になった。
でも俺の脳内は全然楽じゃない。
さっきより心臓の音がうるさくなっている。
い、一瞬何かされるかと思った…。
これじゃ俺が変態みたいじゃんっ。
じわーっと熱くなった顔を隠しながら、今度こそ寝ようと目を閉じる。
バスが出発したかと思うと俺はゆっくりと眠りについた。
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