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先生につられて足を進めていると、屋根が一切ない開けた場所に着いていた。
どうやらテラスような所で、山や木々などの自然が沢山見える。
まだ薄暗い空も不思議と綺麗に見えて、ふわりと吹く風が涼しくて気持ち良い。
「すごーい!先生っ、全部緑!」
「ふっ、見れば分かるよ」
何か馬鹿にされた気もするけれど、それより目の前の絶景の方が気になる。
いつも建物ばかりの街並みしか見ていないから新鮮ですごく綺麗に感じる。
俺は色んな場所を観たくて駆け回っていると、不意に腕を掴まれた。
そしてそのままぎゅっと手を繋がれる。
突然の行為に心臓がドキリと跳ねた。
「離してると、どこかに行っちゃいそう」
「い、行きませんよ…?」
そう言って微笑む先生はどこか悲しそうな、でも優しい表情をしていた。
見たことのない表情に戸惑っていると、指を動かし恋人繋ぎへと変えられる。
これ、漫画で見るよりすごい心臓にクる。
憧れてたけど実際してみると案外恥ずかしい。
ドキドキしているのが繋いだ手から伝わってしまいそうだ。
そんなことを考えていると、顔がじわりと熱くなった。
「先生って、漫画に出てくる男の人みたい」
「ふふ、どういうこと?」
「恥ずかしいこと、普通にするから…」
俺が読む少女漫画に出てくる、所謂イケメンという類の男の人。
全ての行動がかっこよくて、たまにちょっと恥ずかしいこともして、主人公をドキドキさせる。
それは見ている側の俺も同じで、漫画を読む度に胸がきゅんきゅんする。
俺は今、その主人公を体験しているような気分になっていた。
先生はくすりと笑うとぎゅっと繋いだ手に力を込める。
「穂中を目の前にするとしたくなるんだよ」
「う、嘘だ…」
「本当。今だって沢山したいことある」
「どんな?」
「聞きたい?」
見覚えのある顔に変わる先生の表情にぞわりと背筋が冷える。
慌ててやっぱりいい、と首を振って返した。
こんな所でえっちなことされたら、たまったもんじゃない。
外だし、宿泊中…って言うのは昨日破られたけど。
とりあえず朝からそんなことは勘弁だ。
恥ずかしくなってきて、ふいっと顔を背けると突然俺の腕が上がる。
驚いて背けた顔を戻すと、先生が繋いだ手を上にあげていた。
どうしたのだろうと繋がれた手を視線で追えば、それは先生の顔もの傍で止まる。
そのままちゅ、と俺の手の甲に唇を落とされた。
その様子をじっと見ているとにこりと先生に微笑まれた。
治りかけていた顔がまた熱い。
「せ、せ……うぁ…」
「はは、顔真っ赤だよ」
対抗しようと声を出すけれど、上手く紡げなくてただの唸りになってしまう。
分かっていることをわざわざ口に出すあたり性格が悪い。
意地悪なのに、ムカつくのにドキドキは止まってくれない。
こんなの、ずるい。
「先生の、変態…」
「キスだけで顔をタコみたいに赤くする穂中と俺は、どっちが変態なのかな?」
「……うー」
言い返そうとしたら倍にして返され、口を引き結んだ。
やっぱり先生にはどうやったって敵わない。
何をしても俺の負けだ。
観念した俺は大人しく先生の隣に引っ付いていた。
先生と絶景を堪能し、朝食を済ませたあと山登りへと向かう。
山は登ってみると案外緩やかで、初心者でも歩きやすい道になっていた。
それこそ芽鶴は途中でへばっていたが、俺は朝食パワーと相まってどんどん進んで行った。
おかげでへとへとになった俺たちは宿泊先に帰るなり、すぐにお風呂と夕食を済ませ部屋に戻る。
「トランプしよっ!」
班長会議を済ませたあと部屋の襖を開け、そう訴える。
宿泊の醍醐味といえばこれか枕投げだ。
後者をする体力は残っていないので、今日はトランプをしたい。
亜太と鈴木がしょうがないなぁと言って五人でババ抜きをすることになった。
一人足らないのは寝ている芽鶴だ。
「っしゃ、百馬最下位」
「えーなんで!?鈴木には負けたくなかった!」
「お前ババ選ぼうとすると顔が笑ってんだよ。バレバレ」
揶揄うように笑う鈴木の背中をバシッと叩くと、もう一戦申し込んだ。
結局俺は一度も勝てないままみんながトランプに飽きて、山登りで疲れた体を休めようと布団に入ってしまう。
俺も欠伸をすると布団にダイブし、くるりと芽鶴の元へ転がる。
ぎゅ、と後ろから抱きこうとしたけれど、どうやら起きていたようで怖い顔で睨まれた。
じゃあこっちは、と思ったが、亜太は変な体勢で寝ているから抱きつけない。
ぶすっと不貞腐れながらも、掛け布団を抱きしめて寝こけてしまった。
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