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集団宿泊も終わり数日後。
しばらく行事がない為、俺は久々に部活動へと向かっていた。
俺の所属する調理部はちょっと変わった人が多くて、他の部と比べても中々癖が強い気がする。
今は顧問の斉藤先生をはじめとして、三年生不在の六人で活動している。
元々料理をすることが好きだった俺は、運動もできる気がしないのですぐに調理部へと決めた。
ちなみに男子部員は俺だけだ。
調理室へ辿り着きコンコンとノックをする。
すると返事が返ってきて、ゆっくりと扉を開けた。
「やだー!ほなくん、会いたかったぁっ」
「あ、部長――ふぐっ…ぅ!」
顔を見せるなり勢いよく部長の体に引き寄せられた。
部長の高身長のせいで差が出てしまった俺の顔は立派な胸にダイブして、そのまま呼吸する場所を失う。
むーむーと苦しさを訴えていると、再び勢いよく顔が離された。
「ぶ、部長、苦しいのでやめてください…っ」
「あらごめんね。でも大事な愛情表現よ?」
服越しとは言え、女性の胸に顔をうずくめるとは正直いたたまれない。
俺も最初は照れて爆発しそうになっていたが、慣れとは怖いもので今はさほど感じなくなっていた。
調理部部長、未鳥桃々(みとりるる)先輩はスタイル抜群の体と切れ長な目が印象的な美人さん。
もちろん校内でも有名な先輩で、オトした男は数知れず、とか何とか聞いたことがある。
そんな部長に何故か好かれてしまった俺は、こうやって毎回謎の愛情表現を受けている。
深呼吸して息を整えていると、不意に後ろからぐいっと引っ張られた。
「桃々ちゃんに近づくな!離れろっ」
「痛い痛い!首締まってるからっ」
「こら梨々(りり)、ダメよっ」
「ふんっ、いつもわいせつ行為をしている罰だぞ」
折角取り戻した息もすぐに乱れゲホゲホと咳き込む。
後ろを振り向いて見ればそこにいたのはやっぱり梨々(りり)だった。
梨々は部長の妹で俺と同じ一年。
俺より身長が低くて一見可愛らしい見た目をしているが、中身はただの番犬だ。
部長の事が大好きで、俺と話しているとすぐに邪魔をして吠える。
「そうだ穂中。斉藤先生が運んで欲しい物があると呼んでいたぞ。恐らく職員室にいるだろう」
「先生が…?分かった、行ってくるっ」
「気をつけてねぇ〜」
ひらひらと手を振る部長と睨みを効かせる梨々。
二人に見送られながら調理室を出て職員室へと向かう。
コンコンとノックをして扉を開ける。
この前稲見先生と鉢合わせたばかりなので、ゆっくりと慎重に動かした。
「すみません、斉藤先生いますか…?」
「斉藤先生は…給湯室かな、入っていいぞ」
「失礼しまーす」
近くにいた体育の先生に許可を経て中へと入る。
キョロキョロと見回していると、奥の方に『給湯室』と札がある所を見つけ、そこへと足を進めた。
「――もう、私が何をしたって言うのですか?そういう意地悪なことばかりするから嫌われちゃうんですよっ」
「アホか、勝手に察して茶々を入れてくるお前の方がタチ悪いわ。大体お前は――」
ひょこっと頭だけ出して除くと、斉藤先生と稲見先生が何やら言い合いをしているようだった。
斉藤先生がムッと眉間にシワを寄せると、稲見先生はそこを小突いて意地の悪そうな表情浮かべる。
教室で見る時も仲良さそうだけど、喧嘩してる今の方が仲良さそうに見えるのは何故だろう。
あとこんな砕けた話し方する先生って新鮮だなぁ。
ふふ、と思わず笑みを零すと声が漏れていたのか二人が同時に俺の方を向いた。
「あ、えーっと、盗み聞きするつもりはなくて……そうだ、斉藤先生に用があって来ましたっ」
驚きの表情でこちらを見つめる二人に慌てて要件を伝える。
すると斉藤先生が険しい表情をすっかり消して、ふわりと微笑んだ。
「梨々ちゃんから聞いたのねっ、すぐに持ってくるから待ってて」
「はーい」
どこか忙しない様子で給湯室を出ていく斉藤先生。
その様子を眺めていると不意にポンと肩に手を置かれ、思わず体がビクッと跳ねた。
そうだ、まだ稲見先生はここにいたんだった。
くるりと振り返り、顔を先生に向ける。
するといつもの微笑みを浮かべながら、何故か俺の後ろにある給湯室の扉を閉めた。
「せ、先生何で扉…」
「どうしてだと思う?」
クイッと怪しげに口角を上げた先生が俺に問う。
扉を閉めたり、鍵をかけたりするのは二人きりになりたいからだと思う。
他の人に見られたくないこと、とか色々。
その場合することは――
少し考えて、ピシリと体が強ばった。
いや、でもまさか、ここ職員室だし。
さすがの先生でもこんな所では、さすがに、ね?
徐々に距離を詰める先生から逃げるように後退るが、閉められた扉に背中が当たって、俺の逃げ道は無くなる。
両手が伸びてきたかと思えば、俺の頭横にトンと置かれ一気に近くなる。
いつの日か別タイプでされた壁ドンの正規版だ。
「先生っ、こ、ここっ、職員室だからっ」
「そうだね」
「そ、そうだねって…」
上から覆い被さるように先生の顔があって、逃げようにもどうしようもなくただ目の前の瞳を見つめた。
不意に目線が唇へ動くと喉が少しだけ音を鳴らした。
や、やっぱりするのか…?
でも、あぁいや、うぅ、あぁもうっ!
どうにでもなれ!と思い切って目をぎゅっと瞑った。
すると先生の指が顎に触れ少しだけ持ち上げられる。
俺は力み過ぎてプルプルと小刻みに震えていた。
「く、ははっ…」
「え?」
突然聞こえた笑い声に思わず目を開く。
そこには楽しそうに笑う先生がいて、訳が分からず眺めていると俺の頭を優しく撫でた。
「ごめん、意地悪した。さすがにこんな所でしないよ」
まだ微かに笑っている先生にそう言われ、俺はカーッと顔に熱が上がる。
な、何だそれっ、俺が期待して目瞑ったみたいじゃん!
先生の馬鹿っ、意地悪変態!
心の中で罵倒しながらも顔を見られたくなくて先生の胸に顔を預けると、ゆるりと腕が回って抱き締めてくれる。
それがとても心地よくて意地悪されたことなんてすぐにどうでもよくなってしまう。
誰に抱き締められるよりも、この時間が一番幸せな気がする。
俺は先生と一緒にいるとダメ人間になりそうだ。
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