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「先生ってイカはどう調理して食べるのが好きですか?」
「ふっ、急に何の質問?」
「いや、俺こういう魚見てるとすぐ料理の方に考えが移っちゃって…ちなみに俺は刺身派です!」
「百馬らしいな。俺も生で食べるのが好きだよ」
「ですよねっ!コリコリの食感がたまらないんですよねぇ」
「…そうだね」
そんな他愛もない話をしながら、館内を二人でゆっくりと歩いて回る。
何故か先生の視線が俺の胸辺りに向いているけれど、何か付いていたのだろうか。
自分で確認してみても何も無い。
不思議そうに先生を見ると、何も言わずに次のブースへと手を引っ張られた。
今日一日先生とデートして気づいたこと。
やっぱり先生は誰から見てもイケメンで、物凄く目を引く。
隣にいる俺は嫌という程視線に気づくし、先生が微笑む度女の子の小さい声が聞こえた。
まぁ仕方がないことだけれど、なんか複雑な気持ち。
…一人だけだけど、先生の息子に間違われたし。
楽しみながらも、少し不貞腐れて歩いているといつの間にか真っ暗な場所に移動していた。
どうやら熱帯魚ブースらしく、色彩鮮やかな魚が水槽で泳いでいる。
「百馬」
「はぁーい、なんですかっ…」
不意に名前を呼ばれ、視線を先生に移すと突然体を引き寄せ抱き締められた。
先生の謎の行動にどうしていいか分からず、とりあえずそのまま様子を窺う。
すると周りから話し声が聞こえて、慌てて身を引いた。
「ゆ、ゆきさん?」
「ずっと歩いて疲れたでしょ。ちょっと休憩」
「え、休憩ならもっと他に…ゆきさん、人がっ!」
「大丈夫。暗いから見えないよ」
逃げる俺の腰を強く引き寄せ、再び強く抱き締められた。
先生の顔が俺のすぐ横にきてガラスの水槽に反射する。
あっ、これ漫画で見たやつ!
いいなぁとは思ってたけれど、実際されると予想以上に緊張する。
周りに人がいるというのにこんな密着していいのだろうか。
確かに暗いし角の方だから俺の姿は見えないと思うけど、やっぱり不安。
でも嬉しいって気持ちも嘘じゃなくて、欲に負けて俺もぎゅっと抱き着いた。
二人で出かけるのも楽しいけれど、やっぱりこうやって甘やかしてもらえる方が好きだ。
他の人なんか気にしないで、俺だけ見てて欲しい。
俺だけが先生の特別でありたい。
と、考えた瞬間揺らいでいた自分の気持ちに気付いた。
俺、多分稲見先生のことが好きだ。
前に言った芽鶴とか亜太とは違う、もっともっと大きいもの。
誰にも渡したくないし、他の誰も甘やかして欲しくないって思う。
だからそうなれる立ち位置、恋人になりたい。
…でも。
初めて好きになった人ができて嬉しいはずなのに、なぜか泣きそうだった。
反射した顔が見られないよう、俺はそっと俯いていた。
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