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18歳以上ですか?
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髪を乾かした後、リビングに向かうといい匂いがしていた。
そそくさと席について待っていると、先生は笑いながらお茶を持ってきてくれた。
先生の作ってくれた朝ご飯は和食で、本当に美味しかった。
料理は作るのもだけど食べるのも好きだから、これもあり。
勝手に洋食派だと思っていたけれど、お魚とかの方が好きらしい。
「先生って何歳なんですか?」
「どうしたの、急に」
食事を終えたあと、おかわりしたお茶を飲みながらそんなことを聞く。
こうやってのんびりする時間は珍しいから、何となく気になったことを聞いてみた。
「よく考えてみたら先生のことあんまり知らないなーって思って。ちょっとした質問です」
「じゃあいくつに見える?」
そう言われてうーん、と考える。
斉藤先生が24歳だから、それよりも上で、でもまだ若いんだろうな。
そうなると…
「26歳、とかですか?」
「…ふっ、そんな若く見える?ちょっと複雑」
「ええっ、まだ上なんですか?」
俺には全然見える。
かっこいいから歳とか感じさせないもん。
お肌もつるつるだし!背格好もスラッとしてるし。
高校時代はもっとすごかったのかなぁ。
なんか気になってきた。
俺は驚きながら色々と考えていると、むにっと頬を摘まれた。
「来年30のおじさんだよ。引いた?」
「むえっ!?さんじゅうっ?」
もごもごと抑えられたまま驚きを声にする。
それは嘘だ。こんな30歳見たことない。
顔だけ成長止まってるよ!?
「全然そうはみえない…」
そう言うと、先生は軽く笑って俺の頬を撫でた。
それが嬉しくて擦り寄せると、優しい声でおいでと呼ばれた。
素直に従って、椅子に座る先生の上に乗る。
先生に触られると、なぜか無性に甘えたくなるんだ。
いつの間にか俺、くせになってるみたい。
軽く視線あげると、穏やかな表情をした先生と視線が合う。
「先生は大人だね…」
「一回りも違うからな。穂中よりはずっと大人だ」
言いながら掠めた鼻先に、吸い寄せられるように唇が触れる。
柔らかい感触が甘くなってご褒美に変わる。
大人の、先生としてる。
普通じゃしないこと、いけないこと。
その現実が妙に頭に響いて、ボッと顔が熱くなった。
途端恥ずかしくなって思わず唇が離れる。
俺は慌てて表情を隠すように先生の首元に顔をうずめた。
「どうした?」
「…先生に言いたいことがあるんだけど、いい?」
「いいよ。教えて?」
優しく撫でられた背中がじんわりと温かく感じる。
俺は顔を戻して、先生の目を見つめる。
いけないことだけど、もっとしたいって思うんだ。
先生にもっと甘えて、甘やかしてもらいたい。
…だから。
「本当は、言っちゃいけないことなんだけど…いい?」
「そう言われると余計に気になるな。咎めたりしないから教えてよ」
ふっと抜けた穏やかな表情に、ようやく覚悟が決まる。
緊張するけど、言うんだ。
俺は先生に好きになって欲しい。
だからこのままの関係じゃ嫌だ。
俺は、先生と恋人になりたい。
ゴクリと生唾を飲み込んだ。
「俺、実は先生のこと――」
と、言いかけた途端、電子音が部屋に響く。
ブーッと振動しながらテーブルの上を揺らした。
俺はパチパチと瞬きをして、咄嗟に声を出す。
「先生、電話…」
鳴り続けたまま、一向に止む気配のない音に先生に声をかける。
すると軽く溜め息をついて、スマホを手に取った。
「…悪い」
先生は申し訳なさそうな顔をすると、俺の頭を人撫でして腿の上から降ろした。
離れていった体温が少し寂しい。
「はい、おはようございます――」
俺に聞こえないようにか、少し奥の部屋に入って話し始める先生。
敬語ってことは、学校の先生なのかな。
せっかく言えると思ったのに、タイミングが悪すぎる。
もう一度言い出す勇気なんて、そうそうできない。
…やっぱり告白するのやめようかな。
もし振られちゃったら立ち直れないし。
その気持ちをもったまま三年間過ごすなんて苦痛すぎる。
うん、告白するのはちょっと考えよう。
また今度にしよう。
ふぅ、と溜め息をついてテーブルにうなだれた。
少女漫画じゃキラキラしてたはずなのに、実際に恋すると難しい。
主人公があんなに悩むのも当然だ。
チクチクとした胸の痛みは、知らんぷりをした。
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