アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
導かれしパンダたち
-
仕事が終わって間もなく看守長からの呼び出し。
夕飯の時間が終わった後、食堂の食べ物が大量に消える事件があったらしい。
食堂の付近に人がいなかった時間は30分程度で、その間に盗んだとなると複数人の犯行、もしくは特殊な能力者による犯行が考えられると言う。
その調査を、他人より嗅覚が鋭いナンバーとそのサポートに自分がすることとなった。
「どうですか」
「うーん、いろんな匂いがあって…
嗅ぎ分けムズいな…全部当たってみようか」
「はい」
犬、みたいだな…
匂いを辿るナンバーは食堂周辺をひと回りし、事務室、囚人房A棟を通り、囚人房C棟に入り上の階へ上がっていく。
確か、C棟の2階から上には囚人は入っていなかったはずだが…。
「手がかり…ないですね……」
「あれ…足音がする」
「誰か、いるんですか」
「いる…でも…変だ」
「変?」
「小さい、子供かな、1人じゃない、たくさん…うわ…数え切れないくらいいる…」
「…子供?」
「おかしい、食べ物の匂いはするけど、その人本人の匂いがない、足音はするけど、呼吸の音がない」
「…どういうことですか」
「わからない、けど気をつけて、こっちに近づいてくるよ」
「はい…」
手裏剣はいつもより多く持ってきた。
戦う準備はできている。
「くる!!右の曲がり角からだ!」
ナンバーの声に反応して構えた。
曲がり角から現れたのは…
「………パンダ…?」
パンダが、行進していた。
「パンダ???」
「……見た目は、パンダ、だと思います、ただ、本来のパンダの黒い部分が赤いです。赤に置き換わっています」
「…えぇ………」
「…これは、なんと説明したらいいか…
生き物のパンダと言うよりは、サイズも小さいし…ぬいぐるみというか、作り物というか、絵に描いたような…」
「…よくわかんないけど…どうする?」
「捕まえて調べますか、何らかの能力によって動かされているものかもしれません」
「そうしよっか…」
歩いているパンダを一匹抱き上げる。
本当に、絵に描いたようなパンダだ…
「ん…なんか凶悪そうな顔のわりにはおとなしいですね…」
「い゛だぁっ!!!!」
突然ナンバーが声を上げた。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫…触ろうとしたら、噛まれたぁ…」
「こいつ…!うわっ!!!」
近くにいる10体ほどのパンダが牙を剥き出しにしながら向かってくる。
それに反応して手裏剣をパンダ目がけてテレポートさせるが、かなりの速度で動いているため当たらない。
ダメだ、見てから飛ばしては間に合わない。
まずい、追いつかれる!
「くっ!!」
「アカネっ!?大丈夫!?」
「掠っただけです!」
テレポートで自分自身を後ろに飛ばしていなければ確実にガブリといかれていた。
見た目はヘンテコだが攻撃力はしっかりあるようだ。右腕の掠った部分がじわじわ痛む。
後ろへ、後ろへ、連続で飛んで逃げる。
どうやって当てようか。
テレポートを使うには集中力と体力がいる。
重量があるものほど飛ばすのには力がいるので、ずっと自分を飛ばし続けていればすぐに限界が来てしまう、はやく数を減らさなければ。
数でごり押すしかないか。
身体中に忍ばせている手裏剣を10個、それぞれ少しつづ位置をずらしてテレポートさせる。
3体に命中する。
手裏剣のテレポート先が体内だったパンダ達は一瞬で消滅した。
当てれば、消えるということか。
このペースで手裏剣を使って足りなくならないか不安だがやるほかないだろう。
少しずつ、確実に数を減らしていくが、減らしても減らしても曲がり角からぞろぞろとパンダが出てくる。
「これじゃキリがないよ!」
薙刀で応戦中のナンバーが叫ぶ。
「でもこうするしかっ!!」
手裏剣を飛ばしながら返事をする。
しかしそろそろ余裕がなくなってくる頃。
後ろへテレポートしようとした時、突然それは発動しなくなった。もう限界か!
「まずい!追いつかれる…!」
その瞬間、自分の目の前まで迫ってきていたパンダ達が突然消えた。
白く輝く刃が振り下ろされるのが見えた。
「こんな夜遅くに…何騒いでるんですか、先輩方」
現れたのは、茜色の真っ直ぐなツインテールに真紅の瞳、日本刀を携えた…
「この声は、香涙!?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
11 / 26