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自分のせいで
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彼女の名は香涙(かおる)。
この刑務所に務める看守で、自分たちの後輩、剣術の天才として看守達の内では有名だ。
近頃彼女はずっと夜勤だったので久々に顔を合わせることとなった。
「ナンバー先輩と、アカネ先輩じゃないですか、どうして夜勤でない先輩方が」
「香涙さん、助けてくれてありがとうございます。
説明してる時間はないので…とりあえずこいつらの数を減らすのを手伝ってくれますか」
「任せてください…こういうのは得意なので」
すぅ、と息を吸った彼女は目にも止まらぬ速さでパンダ達を斬っていく。
「香涙すっごーい…」
「先輩方も、気を抜かないでください!」
彼女がものすごい速さで斬ってもまだパンダは出てくる。
自分は能力の使いすぎで自分自身を飛ばすのは厳しいが、手裏剣程度の重さのものならまだいけそうだ。
向かってくるパンダ達をまた手裏剣でひとつずつ消していく。
前から3体、4体、5体と向かってくる。
手裏剣の数は…まだ足りる。
と考えていたその時。
「あっ!ヤバい」
そのナンバーの声が聞こえた次の瞬間。
バァンッ
体に強い衝撃。
何が起こった?
地面に横たわる自分。
突き飛ばされた…?
「う゛ぁぁぁぁっ!!!!」
自分のすぐ横には、10体ほどのパンダに噛みつかれ叫び声を上げるナンバーが、倒れていた。
「なっ!!!」
テレポートを使うことも忘れた自分は手に握っていた手裏剣を、ナンバーに噛み付くパンダたちに何度も突き刺していた。
なんで、なんで、どういうことだ。
突き飛ばされた?
ナンバーに、庇われた?
「先輩ッ!!!!」
すぐに香涙が駆けつけてきて周りのパンダ達を斬った。
「ぁ、アカネ、落ち着いて……ボクは、へいき、だから」
平気という彼の体には、たくさんの噛み付かれた傷口から、大量に流れる血。
「何してるんですか!!なんで、なんで…」
「気づいて、なかったでしょ……
後ろ、からも…来てたの……」
そうか、自分の、自分のせい、
自分のせいで、また
「先輩、大丈夫ですか!!?」
全てのパンダを斬り終えたらしい香涙が駆け寄ってきた。
「あ…」
声が、言葉が上手く出せない。
「これは…凛さん呼んだ方が良さそうですね…私呼んできますから、
アカネ先輩、ナンバー先輩を医務室まで運んでもらえますか」
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怪我をしたナンバー先輩の応急処置をするために凛さんを呼びに行った。
既に業務を終え自室に帰って休んでいるであろう凛さんには申し訳ないが、自分には医療系の知識はないし、アカネ先輩もあの調子では何もできなそうだった。
部屋にいた凛さんは普通に起きていた、また仕事を持ち帰ってやっていたのだろうか…
あまり無理はしないで欲しいところだが、こんな時間に呼び出す自分もまた彼女に無理をさせている一因なので、何も言えなかった。
夜遅くにすみませんと謝る自分に、よくあることですから気にしないでください、と優しく微笑んでくれた。
慣れた手つきで手当をする凛さん。
自分には何をしているのかさっぱりだが……。
「とりあえず…終わりました。
これでしばらくは、大丈夫だと思いますが、明日きちんとお医者さんに診てもらってください」
手当を受けたナンバー先輩は、今は医務室のベッドでぐっすりと眠っている。
「次は…アカネさんです」
凛さんは、医務室の隅のソファでうずくまっていたアカネ先輩に声をかけた。
アカネ先輩は心底驚いたような顔をしている。
「……えっ…自分は怪我なんて…」
「呼吸…少し荒くなってます…」
そう言うと凛さんはアカネ先輩の横に座る。
「私の言う通りに、呼吸してください」
凛さんが指示する、吸って、吐いてに従うように呼吸をするアカネ先輩。
アカネ先輩の様子が少しおかしいことには自分も薄々気づいていたが、過呼吸気味になっていることに気がつける凛さんはやはり流石だなぁと、素直に尊敬する。
「…落ち着きましたか?」
「……はい、迷惑かけてしまって、すみません…」
「いえ、気にしないで、ください…
あとこれ、気持ちを落ちつける効果のある、お薬なので…飲んでください」
「…ありがとうございます」
凛さんの呼吸法と薬のおかげで落ち着いたアカネ先輩はナンバー先輩をお姫様抱っこして部屋に帰っていった。
凛さんは自分が部屋まで送り届けた。
日頃の疲れが溜まっているのか、顔色が悪いように見えたから。
結局あのパンダの大軍はなんだったのか、分からずじまいだった。
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