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あいつ
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俺とあいつは、幼馴染だ。
けれども、幼稚園、小学校、中学校へと同じ学校に通っただけの仲であって、近所であるにもかかわらず、一度も話したことがなかった。
話したこともないので、遊んだ記憶もない…というわけでもない。
一度だけ、小学のときに遊んだことがあった。
その日は、その日は、夏の終わりを知らせる夜の涼しい風がそよぐ公園でのこと。
小学校最後の夏休みだったもんだから気分が良く、暑いにも関わらず外へ友達と遊びに出掛けた。
そして、夕焼けチャイムが流れたにもかかわらず友達と公園で遊び呆けた俺は最後は結局一人になり、親に怒られるのが怖くて家に暗くなっても、帰ることができなかった。
そのとき、あいつと俺は会った。
あいつは、俺を見た途端目を丸くし、驚いていたが、すぐに俺に手を差し出した。
口には出していないが、"大丈夫?"と言っているように見えた。
見えただけであって、実際、そうではないかもしれない。
けど、そのとき、心細くしゃがみ込んでいた俺はそう思った。
だから、差し出された手にもかかわらず手を思いっきり払った。
可哀想と思われ、意地を張り、助けられるのがいやだった。
手を払われたあいつが驚いてポカーンとしたとき、慌てた俺はごめんと言うがあいつは声は一切出そうとしない。
その代わり、思い出したように突然ブランコまで走り、手でちょいちょいっと、
俺に"おいでよ"と誘った。
そして、二人でブランコに乗った。
会話はない。
ただ、公園にある一つの街灯に身守られながら、一緒に漕ぎ、夜風に吹かれながら揺れていた。
その後は、俺の母親が警察官と一緒に俺を迎えにきて、泣かれた。
そして、怒られた。
「なんで早く帰って来なかったの!心配したじゃない!」と。
気付いたら、一緒に揺られていたはずのあいつはいなくなっていた。
数日たったあと、家からでることを禁止されていた俺は解放され、あいつの家に行ってみることにした。
一応家はどこにあるかは、知っていた。
一度も行ったことはないけれど…
あいつが住んでいるのは隣のおんぼろアパートだ。
でも、あいつは留守だった。
何度もチャイムを鳴らしてみても出てくることはなかった。
そして、さらに数日後、夏休みが終わった。
あの日以来、あいつとは顔も合わせていない。
クラス替えがあったからだ。
クラス替えがなくても、結局は話すこともないと思うけれど。
月日がたった俺らの関係はさらに、離れていった。
卒業して、同じ中学校に通うにも、ほとんど顔を合わせなくなっていた。
でも、一年のときあいつのことで、ある噂を耳にした。
「" "てさ、親から虐待受けてんだってよ」
どこの誰が言ったのかは知らないが、それを聞いた俺は寒気がした。
"やっぱり"
あの時から体がいまだにひとまわり小さいのも、
髪が少しばかり長かったり、夏でも長袖を半袖にしようとしない理由はもしかして…
本当にそうでないかもしれないただの噂話を間に受けた馬鹿な俺は、今まで話しかけようとしなかったあいつに話しかけた。
「" "ってさ、親に虐められてるってまじ?」
それを聞いたあいつは、顔を真っ赤にしてもなお、声を出さなかった。
皆の前で言った俺が悪いのかもしれない、声を出して否定しなかったあいつが悪かったのかもしれない。でも、結果として、この日から"可哀想な奴'になった。
声を出さなかったことで誤解が生まれ、あいつは
虐められた。
そして、俺はそれを見ているだけの人間になった。
本当にただただ、見ているだけ。
俺らは、一年から二年、そして、三年になった。
ただの偶然か、俺とあいつは同じクラスになった。
同じクラスになって、受験生としての意識が高まってきた頃。同時にあいつに対する虐めはなくなっていったときのこと。日直だった俺は先生に仕事を頼まれ、放課後、図書室で本を探していたときだった。
「お前さ、なんで声出せねぇの?」
図書室に入り、先生がいないことに気づいた。そして代わりにあいつが先生がいるはずのカウンターに1人で座って本を読んでいた。
確かあいつ図書委員だったな。
俺ら以外に人はいない。
二人きりだ。
そう思った瞬間、今まで貯めてきた気持ち、思い、言葉が一気にこみ上げた。そして、でた言葉がこれだ。正直出直したい。
"喋れないから"
手に持っていたノートに少し崩れて書かれた字に俺はびっくりしたものの、質問を続けた。
「なんで?」
少し悩むように首を傾けたあと、あいつは、ノートにまたこう書いた。
この時の仕草が可愛かったなんて口が裂けても言えない…
"声を盗まれたから"
そう、書かれていた文字に
「は!?誰に?!」
ありえない事だ。
けど知ってもなお、深く考えることなく驚いた。
あいつはというと、目を大きくしたあと、可笑しそうにクックックと笑った。
"君ってホント、バカだよね"
「バカじゃねーし」
"詐欺に将来騙されないように気をつけてね"
「たぶん、大丈夫…」
あいつは余計なお節介を。
俺は自覚したくないことと、どうしようもないこと対して複雑な心境に落ちた。
顔に出ていたのか、俺の顔を見たあいつはまた可笑しそうにクックックと笑った。
そして、
"母親の虐待受けてたら、こうなった"
とノートに書き足した。
「ってことは、あの噂はまじだったのかよ」
"まじ"
「いつかは出せるのか?」
"わからない"
そう書かれてしまっては、どうしようもない。
でも、心のそこから助けたいと思った。
「…ごめん」
"なにが?"
「お前が虐められているにも関わらず
助けることもできなくて、本当にごめん。」
俺は、今まで背負ってきた罪をあいつに告白した。
俺の発言によってお前が、虐められてしまっていたこと。
そして、見ることしかことしかできなかった俺のことを。
"あのさ、カナメ君"
「べつに許してもらうために言ったわけじゃない。ただお前の声に、体に、傷つけるような原因作ってごめんって謝りたくて…さ。それにこのことを言い出したからにはお前の本当の気持ち、そして気が済むまで俺を殴るなり罵られるくらいの覚悟で言っているんだ」
俺の告白を聞いたあいつはまたノートを開いてこう書いた。
"僕はさ、家であの人からひどい目にあって、唯一の逃げ場所である学校でも虐められて、すごくつらかったし死にたいくらいだった。"
"今、学校で虐められてなくなってきたけど、やっぱりあの人のいる家には帰りたくない。"
"だけど、僕は他の人が原因だなんて1度も考えたことがない。
一つ一つ、全てに理由があることを知っていたから。"
"だから大丈夫。"
"君のせいじゃないよ。"
俺はそこまで読んだ時、ひどく腹がたった。違う、俺はそんなうすぺっらい言葉で許されるはずがない。
「なんで、なんでお前はこんな俺を許せるんだよ!」
"僕は君に見られていたことを知ってた。でも、それは、優しい視線だった。あの人のような視線じゃなかった。本当に心が救われるような暖かい視線。"
"だから君が僕に謝ることはないんだよ。しかも、君は口には出さないけどいじめてきてきたやつ全部ぶっ飛ばしてたの知ってたしね。嬉しかった"
"ありがとう"
気付いたら、俺は泣いていた。
嬉しかった。
助けられない現実に対し、反発しようとずっとあいつを見ていた。
バレないように喧嘩もした。
あいつをあいつらから守るために。
けれど、気づいてしまったのだ。
あいつに対して、絶対に持ってはいけない感情。
「お前が好きだ、ハヤト」
ぐずぐず涙を零しながら内に秘めていた感情をさらに告白をしてしまった。
ごめん、ごめんとあとから口にして俺、全然かっこよくねぇと思っていてもあいつは俺よりも泣きながら俺がどうしても見たかった笑顔を俺に向けて、
『僕も好きだよカナメ』
「「大好きだ」」
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初めまして56にゃんです
初の投稿ですっ
短かく拙い文章を読んで下さりありがとうございます。
お互いの名前を序盤に出さず、心が通じあった所に出してみて甘酸っぱさ(?)みたいなのを出してみました。最後はハヤトくん、声が盗まれていたのが帰ってきたみたいです。良かったですね。
にしても、文章力ってなんでしょう?美味しいんでしょうか?
:,('ω' ))ムシャムシャ
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