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*189.
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何と、ここに来て最も悲しい事実が発覚してしまったのだ。三日月ヤローが好きだとか、彼女感匂わせてるクソ女が居るだとか、そんな次元じゃない。俺の気持ちすら…竹内さんには伝わっていなかった。
「おま、お前…気でも狂ったのか?突然俺を…とかそんな、気が変わるの早すぎだろう…っ。」
「何にも変わってないんだけど俺。」
「えっ……は?じゃあ好きな男がいるだの諦められないだの言ってきたのはどう説明するんだ!」
「だから全部あんたの事じゃん……理解もせずに諦めろとか言ってたの?それはそれで説明欲しいんスけど俺……。」
「それはだって………ん?」
えーっと、うーんと。
俺らって、なんの話してるっけ。
そんな事すらわからなくなってしまう程に、外は暑いし横を通る人の目は痛い。真っ赤な顔した竹内さんも、赤面してるのか気温にやられてんのか怪しいし。マスクがもぐもぐ動いているのは…まぁいつもの事か。これは気にしないでよさそう。
「とりあえずさ、立てる?…帰ろっか。」
歩道の脇に体育座りしてる大人に手を差し伸べる機会なんて、俺の暮らしてる所じゃそうそう無い光景だ。しかも相手が竹内さんなんだから、こんなの一生のうちに一度あるかどうかの世界。
何のためらいもなく伸ばした手だけど、なかなか竹内さんは取ってくれない。だが、その疑問はすぐに晴れた。
「……自分で、立てるから…平気、だ……。」
「あ…そっか。そうっスよね、ごめん。」
俺が竹内さんを好きって、知らなかったなら。
動揺するのは当然だ。今までみたいに触れる事すら抵抗されるんだ。
それが男を好きになるって事で、今度こそ本当の失恋が待っているって事。
「やっぱ俺もう少し買い物していきたいかも!俺らの地元って何もなくないスか?暁人さん先帰っていいスよー。」
精一杯の強がり。普段通りでいられただろうか。変に硬くなったりしてないかな、不自然じゃないかな。
竹内さんを、困らせてないかな。
「ぁぁあの、佐々木…その買い物、俺も……付き合う…。」
「え、嘘。」
「だめ…か?」
「いや……全然…ダメじゃないスけど…。」
背中の裾に、ほんの少しの違和感。気にせず前に進んでいたら簡単に解けてしまう程微かに握られたそこが、竹内さんに繋がっている。
俺を拒否しているわけじゃない。それがわかれば、今の俺には十分だった。
「でもやっぱ…今度でいいや。」
「は?何か必要なものじゃないのか…。」
「別に急いでないっスよ。だから、帰りましょ……一緒に。」
こくんと頷く竹内さんの、マスクなんかじゃ到底隠れない火照りの本当の理由は何?
もう一度、最後の最後にちょっとだけ…期待してもいいですか?
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