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忌引きが終わり、大和はいつものように学校にいた。
柊一に作ってもらった弁当を広げ、箸を構える。
「え、お前弁当なの初めてじゃね?」
その姿に、大和の友人である叶内智也が声を上げた。彼は大和の境遇を知る唯一の人物であった。
青い風呂敷に包まれた二段の弁当。それは、柊一が昔使っていたものだ。
「うん。柊一さんが作ってくれたんだ」
「誰それ」
「今一緒に暮らしてる人」
「…ああ、引き取ってくれた人か」
大和の事情を知る智也は、あまり触れないようにしながら購買で買ったパンを口に頬張った。
「どんな人?」
「……なんで?」
「いや、気になんじゃん。変な人だったら危ないだろ」
変な人、ではないと思う。
「別に…良い人だよ」
「…ふーん。見てみたい」
「…は?なんで?」
智也は、大和のロクでもない母親を知っているため、今度の保護者がちゃんとした人なのか、見極めたかったのだ。
だが、そんな気持ちもつゆ知らず、智也がそんなことを言うなんて珍しいと、大和はそんな思いで智也を見ていた。
「いいだろ。お前の新しい家も覚えたいし」
「…柊一さんに聞いてみる」
「おう」
柊一さんは、多分良いって言うと思うけど、一応聞いてみよう。それに智也は少し、遠慮しないところがあるし…できれば会わせたくないな。
そんなことを思いながら、大和は好物のたまごやきを口に運んだ。
*
「た、ただいま…帰りました…」
ただいま、というのもなんだか違う気がしたので、大和は硬い挨拶をして家に戻った。
靴を脱いで上がると、リビングからテレビの音が聞こえてきて足を止める。
今日は柊一も仕事のはずだが、もう帰って来ているんだろうか。
「あの…柊一さ……」
「………」
大和は、ソファで眠る柊一の姿を見て、慌てて口をつぐむ。
起こさないように忍び足で近寄ると、テレビがうるさいだろうと消してやった。それから、毛布をかけようと辺りを探す。
だが、今は真夏。暑いからいらないだろうかと柊一の様子を見てみると、大和はその寝顔にしばらく目を奪われた。
柊一は、泣いていた。
目の端から、また一粒と涙が溢れ落ちる。
「…柊一、さん……」
どんな夢を見ているのか。なんで泣いているのか。
大和は気になって、そっと柊一の頬に手を伸ばした。それから、流れる涙を拭おうとしたところで、我に帰って手を引っ込める。
ああ、危ない。起こしてしまうところだった。
大和はこれ以上、柊一の顔を見ないようにと背を向け、自分の部屋へ戻る。高鳴る胸を押さえながら。
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