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シングルベッドにしては大きいサイズなのだが、大の男二人で寝るには少々窮屈だった。
熱帯夜の中、暑苦しい毛布を蹴飛ばして地面に落とす。暑くて眠れない、と、大和は心の中で溜息をついた。
ああやっぱり、ムリだ。
大和には悪いが、そろそろギブアップにさせてもらおう。
「おい、大和…」
「……」
「大和……?」
しかし、自分と同じく眠れていないと思っていた大和からの返事はない。まさか、眠ったのか?こんな蒸し暑い中で。
柊一は、大和の様子を確認しようと寝返りを打った。
すると、予想外の近さにびっくりして、がたんと何かに頭をぶつけてしまった。
だが、それでも大和は目を瞑ったままだ。
「寝たのか……」
じゃあ、自分がいなくてももういいだろう。
柊一は、大きな子供を寝かしつけた後のようにベッドから静かに降りると、乾いた喉を潤すため台所へ向かった。
コップに水を入れ、飲み干す。それでも足りなくて、もう一杯水を汲んだ。
まったく、よくあんな狭くて暑苦しい中で眠れるもんだ。それに、一緒に寝たいだなんて、小学生じゃあるまいし…。
アイツは、最初に会った時から、何を考えているのかわからない。
「柊一さん」
「っ…あ、あぁ、大和…起こしちまったか?」
「……」
突然の声に振り向くと、寝たと思っていたはずの大和が立っていた。
だが、どこか様子が変だ。
「…大和?」
「……」
ぼうっとして、目の焦点が合っていない。
俺の名前を呼んでいるのに、俺のことが見えないみたいだ。
柊一は大和の様子に不安を感じて、そっと大和に近寄る。
「おい、大和…」
そして、その肩に触れようとした、その時だった。
がばっ、と両腕を背中に回され、抱き着かれたのだ。抵抗する暇もなく呆気にとられた柊一は、大和の肩を押すも更に締めつける力は強くなる。
なんなんだこれ。
自分より背の高い男に抱きしめられていると、なんだか情けない気分になってくる。
寝ぼけているのか?
「おい、しっかりしろ。目を覚ませ。俺は男だぞ」
「………」
「おー、ぃ…っ」
バンバン、と大和の背中を叩いていると、急に後頭部に手が回る。それから慣れた動きで体をほんの少し離した大和は、そのまま驚く柊一の唇に自分の唇を重ね合わせた。
おい、おいおいおい…!
大和を起こす勢いで必死に引き剥がそうともがくも、大和の力は尋常ではなく、柊一の抵抗を押さえ込むように再び深く口付けた。
角度を変え、舌を差し込む。
その甘く痺れるような口付けに、柊一は思わず抵抗を弱めた。息が苦しくなり、次第に立てなくなりそうで慌てて大和の腕にしがみつく。
「ン、…っ、んう…!」
いつまで続くんだ。
こいつ、本当は起きてるんじゃないだろうな?こうやって俺をからかって、遊んでるのか?
口付けの合間に大和の顔を覗くと、その目はやっぱり焦点が合わない。寝ぼけているんじゃない。眠っているんだと、柊一はその時確信した。
このままだと永遠に終わりそうにない口付けに、柊一は精一杯の力を振り絞って大和を突き飛ばした。
すると、その勢いのまま壁に激突し、そのままズルズルと床に座り込んで再び眠り始める。まるで何もなかったかのように。
「っはぁ…は……ったく、どんな夢見てんだよ……!」
男のキスで窒息死するかと思った。
唇から垂れる唾液を拭い、後から襲ってきた気持ち悪さをコップの水とともに吐き出した。それから、床に座り込んだままの大和を引っ張るようにしてベッドへ運ぶ。
これじゃあ、本当に子供みたいだ。
無事ベッドに運び終え、息をつく。
また襲われる前にと、柊一は早々に部屋から退出した。
まだ、心臓が早い。
ベッドにいた時より、全身が熱かった。
「…はぁ……本当になんなんだ…」
今日は眠れそうにない。
*
「おはようございます」
「あ、ああ…」
あれから、やっぱりあまり眠れなかった。
もちろん夏の暑さもある。だがそれ以上に、この目の前の男からされた濃厚なキスが、目を瞑るたびに駆け巡りどうしようもない気持ちにさせられた。
ああ、できることならあの記憶を消してほしい。
「お前さ……」
「はい…なんですか?」
「……昨日のこと…」
「…昨日?」
案の定だ。
この反応からすると、全く覚えていない。これが演技だとすると役者レベルだ。
それならば、無理に教えることもないだろう。こっちだって、どういう顔して、どんな注意をすればいいのかもわからない。今日から寝る部屋も変わるんだ。ドアを閉めればいいだけ。
柊一は得意の作り笑顔で、動揺を覆った。
「いや、なんでもない。それより、今日からは親父の部屋で寝ろよ。わかったな」
「はい、わかってます」
「ならいい。…行ってくる」
「いってらっしゃい」
大和は、どうしても「いってらっしゃい」と言う朝のやり取りをしたいようだ。今までしていなかったこともあって少々面倒だが、柊一は大和の物欲しげなこの顔に弱かった。
まぁ、こんなやり取りに慣れていくのも悪くはないか。
「…ああ、行ってきます」
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