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お昼休み。
いつもベラベラと喋る智也が、ずっと何か考え込んでいて、大和はこの奇妙な沈黙に耐えきれずに咳払いをする。
今日も柊一が作ってくれた弁当をお茶で流し込むと、とりあえず昨日のことを話しだした。
「昨日のこと、気にしてるんだったらさ…柊一さんが、言いすぎてごめんって謝ってたよ」
「……え?」
「…俺に、お前みたいな友達がいて良かったって、言ってたし」
「……」
話を切り出した。
にもかかわらず、智也は再び口を閉ざしてパンを黙々と食べ始める。
大和はなにが正解なのかわからず、困ったように頬をかいた。その時、智也が静かに口を開く。
「…柊一さんかぁ…あの人、すげぇいい人だな」
「っ……え?」
予想の斜め上をいく発言に、大和は一瞬思考が止まった。
皮肉なのか、と思ったが、智也の顔は初めて見るような笑みを浮かべている。
「俺さ…こう、なんか空気読めないっつーか…思ったらとことん言っちゃう奴で、友達とはしょっちゅう喧嘩になる。でも大人はみんな笑顔でごまかしたり、逃げたり…そんな感じ」
「……」
「でも、あの人はちゃんとぶつかってくれた…気がした。言葉キツイから、かなり落ち込んだけど、ああいう大人もいるんだなって思ったらちょっと嬉しかった」
まるで、智也じゃないようだった。
今までどこか大人ぶって、達観していた。しかし今の智也は普通の高校生だ。
「なんかごめんな。お前の兄ちゃんに喧嘩売るような真似して」
” 兄ちゃん ”。
それが柊一さんのことだとわかる。でも、なぜかその言葉がストンと胸に落ちなかった。
大事な弟だと言われて嬉しかったはずなのに。
智也が、柊一さんの良さを理解した。それはいいことのはずなのに。
「……いや、多分、柊一さんは気にしてないよ」
「ハハッ!確かに、あの人そんな感じする」
やめろよ。
たった一回、口喧嘩しただけで、知ったような口聞くな。
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