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22.
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しばらく空いて、海くんの出場競技がやってきた。
借り人競争だ。
運動が苦手な人に大人気なこの競技。
海くんは勝ち取っていた。
海くんがスタートラインに立つ。
やっぱり綺麗だ。体操服から見える足、腕。うっすらついた筋肉は色気がある。
運動ができないと自分でも言ってるのに、勝気な瞳は変わらない。
精一杯やってやる、と聞こえてくるようだった。
海くんが走り出す。うん、遅い。というか足がもつれそう。
それでもこけることなく借り人を引く。
海くんより先に引いた人たちは声を張り上げて借り人を探している。
「スーツきてる先生どこ?」
「まだ衣装着てるリーダーいない?」
「来賓でメガネかけた方いませんかー?」
「弟を見に着たお兄さんいませんか?」
「教育実習の先生って、期間終わってね?」
「白衣を着た保険医って、ジャージやん!」
「彼氏を見にきた彼女……?」
みんな口々に言っているけど、まあむちゃくちゃだ。
体育祭にスーツは着ないだろうし、リーダーは競技中は衣装を着ない。来賓でメガネの人がいるかはお題を作った方にも分からないだろう。
むちゃくちゃな借り人だから、足の速さより引きの強さが勝負を決める。海くんは何を引いたんだろう。
と思ってたら僕の方にきた。
「唯斗、のお父さん、一緒に来てください」
「僕じゃなくて父さん?」
「え、ああ、わかったよ。あかりさんこれ…」
と、父さんが持っていたビデオカメラを母さんに渡す。
すると海くんが止めた。
「持っててください。ビデオカメラを持っている父兄を借りたいんです」
なるほど。
うちの父さんは未だに僕のビデオを残してるからなあ。中身の半分くらい母さんな気もするけど、一応僕の成長記録として撮っているらしい。
「父さん!海くんが走ってるところちゃんと撮りながら走ってね」
「それは俺がコケるだろう」
「海くん足遅すぎるから大丈夫!」
「唯斗後でしばく」
そんなやりとりをしながら出発した。
最初は海くんの後ろから撮ってたはずの父さんは、海くんと並走して海くんの横顔を撮りながらゴールした。
僕の足の速さは父さん譲りだ。カメラを構えながら走る父さんより、海くんの方が疲れていたような気がするのは気のせいだと思いたい。
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