アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
23.
-
海くんの借り人競争から戻ってきた父さん。
母さんは父さんがかっこよかったと褒めちぎり、父さんはそれに照れてデロデロしていた。
「父さん、ちゃんと撮れた?」
「ああ、海くんは本当に走るのが苦手なんだな。追いつけた」
「言った通りでしょ」
「唯斗はこれからしばかれんの?」
「そうだね、海くんが怒ってくれるならそれはそれでいいかもしれない」
父さんはなんともいえない顔をしたけど、紛れもない僕の本音だ。
海くんがしばくと言うなら喜んで受け入れる。
正座してろって言うなら正座するし、そのままジャンプしろと言うなら正座でジャンプも頑張る。
「海くんお疲れ様。1位おめでとう」
「あんがと。今から須田だぞ」
直樹が障害物競争。見たときにはもう走り出してて、直樹は必死に網を潜っていた。
抜け出したと思ったら次は試験管いっぱいに入った水をこぼさずに運ぶと言うものだった。
「海くん、これでもよかったんじゃない?」
「これだと最後の麻袋で大きな遅れ取るんだよ」
どう言うことだろう?と思いながら見続ける。
平均台を超え、グルグルバッドを終えた直樹が走りついたのは麻袋。そこに入って必死にジャンプしてゴールを目指すらしい。
………どう見ても30メートルくらいあるけど、あの距離をジャンプ?
「こんなん俺ができるわけねー」
「確かに。海くんだったら遅れをとるんじゃなくて転けちゃうよ。可愛い唇が切れちゃったらどうするの。すべすべのほっぺに擦り傷が入っても痛々しいよ。可愛いお鼻が潰れちゃうかもしれない。目に土が入っても痛いだろうし、やっぱり借り人競争でよかった」
海くんから返事がなくて海くんを見ると、冷えた目で僕を見ていた。何か変なこと言ったかな?
「もういい。お前次出番じゃねーの」
見ればリレーの招集がかかっていた。
「行ってくるね。このリレーもアンカーだからちゃんと見ててね」
海くんが見ててくれるとは思ってないけど、見てくれるかもと思うとやる気がさらに湧いてくる。
リレーは1人400メートル。
同じブロックの1.3年生と組んでやる。
比較的足の速い人ばかり集まってるから勝てる自信はない。けど距離的に僕に有利だ。
100メートルは全力疾走ができる。だけど、400メートルを最後まで全力疾走することは困難を極める、というか無理だ。300メートルを過ぎたあたりから苦しさが増し、ただ気力、根気だけで走っているようなものだ。
そして、僕はその瞬間が好きだ。ただゴールだけを目指すその瞬間が好きだ。苦しくても、苦しくても、僕はゴールを目指したい。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
24 / 143