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本当はゆっくりご飯を食べていたかったけど、そう言うわけにもいかない。
午後イチで応援合戦があるから着替えに行かなきゃいけない。
「母さん、今日も美味しかった。ありがとう。ごめんね、僕着替えがあるから先に行くね」
そう言って1人席を立つ。
まだ海くんと直樹は食べていて、おいしいと食べてくれる2人を見て母さんは嬉しそうだった。
そして、嬉しそうな母さんをみる父さんはもっと嬉しそうだった。
父さんと母さんを見てると、やっぱりポカポカする。
ブロックの更衣室に着くと、ほとんどの人が揃っていて着替え始めていた。
次の応援合戦が、僕たちの1ヶ月の本番だ。
1回きり。この本番1回のために来る日も来る日もダンスの練習をした。
やっぱり途中で熱を出して倒れる人や、ストレスから胃炎を起こした人、見てわかるほどにこのひと月で痩せた人もいる。
それでも、全員が揃っていた。
全員がこの日のたった1回のためだけに頑張って来たんだなあって改めて思う。
全員が着替えて外に出る。
他のブロックも着替えて出て来ていて、ブロックごとに固まっている。どのブロックからも緊張感が伝わってくる。
赤色の僕は、1番初めに応援合戦だった。
本番は体が勝手に動いた。あれだけ練習したんだから当然かもしれないけど、ものすごく緊張してたはずなのに、音楽が始まるとすべて忘れて踊っていた。
踊り終わるころには、先輩たちはほとんどみんな泣いていた。
僕たちが集まったのはひと月前。だけど、先輩たちはそれより前からダンスを考え、衣装を考えてきた。先輩たちは、退場すると僕たちひとりひとりにありがとう、頑張ってくれてありがとうと言っていった。
次のブロックが踊っていたのに、僕は先輩たちしか見れなかった。
達成感から、やりきった思いから泣く先輩たちがとてもキラキラしていた。目標に向かって走りきった。泣いてるはずの先輩たちが、とても大きく見えた。
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